コンサート感想 1997

1997年1月9日(木) サントリーホール
アルフレッド・エシュベ指揮
ウィーン・ヨハンシュトラウス管弦楽団
1.ヨハン・シュトラウス2世  喜歌劇「こうもり」序曲
2.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ「電磁気のポルカ」
3.ヨゼフ・シュトラウス    ポルカ・シュネル「騎手」
4.ヨハン・シュトラウス2世  ワルツ「メフィストの地獄の叫び」
5.ヨゼフ・シュトラウス    ポルカ・マズルカ「女心」
6.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ・シュネル「恋の踊りのときめき」
7.ヨハン・シュトラウス2世  ワルツ「春の声」
8.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ「狂乱のポルカ」
9.ヨハン・シュトラウス2世  喜歌劇「ローマの謝肉祭」序曲
10.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ・フランセーズ「田舎のポルカ」
11.ヨハン・シュトラウス2世  ワルツ「朝刊」
12.ヨハン・シュトラウス2世  ギャロップ「常動曲」
13.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ「爆発ポルカ」
14.ヨハン・シュトラウス2世  ワルツ「美しく青きドナウ」
15.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ「シャンペンポルカ」(アンコール)
16.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ「観光列車」(アンコール)
17.ヨハン・シュトラウス2世  ポルカ「雷鳴と電光」(アンコール)
18.ヨハン・シュトラウス1世  ラデツキー行進曲(アンコール)
NewYearコンサートへ行って来ました。
音がとてもウィーン的で、かつ技術的にも申し分なく満足した。
結構、リラックスして聴くことができたのでよかった。

1997年1月13日(月) サントリーホール
若杉 弘指揮
NHK交響楽団
1.メシアン作曲「われら死者のよみがえりを待ち望む」
2.ブルックナー作曲 交響曲第2番ハ短調
演奏する曲があまり有名でないため、サントリーホールには、半分くらいしかお客さんがいませんでした。
客の入りから、大都会東京といはいえ、本当の芸術を知る者は数少ないのかなあ?と思った。
1曲目は、メシアン作曲「われら死者のよみがえりを待ち望む」。
ブラスアンサンブルとパーカッションという構成ですが、木管楽器のきれいなハーモニーはかなり好感した。
曲の内容は、第2次世界大戦で死んでいったものの冥福を祈るということですが、タムタムなどの打楽器が
やかましいほどの雄叫びをあげていたサウンドを聴きながら、戦争後の息苦しさを感じた。
2曲目は、ブルックナー作曲 交響曲第2番ハ短調で、この演奏会で初めて聴く大曲でした。
第1楽章からチェロがおおらかに歌い、そのあまりの美しさに身を乗り出して聴いていた。
第2楽章は、ブルックナーの教会に対する神聖さを表現しているように思えた。
ブルックナーは教会のオルガン奏者だったので、この感覚は遠からず合っていると思う。
第3楽章は、ブルックナーの尊敬していたワーグナーを感じさせるほどの気迫あるワーグナーサウンドだった。
ある時は、ブルックナーの神秘的な旋律が、またある時はワーグナー的な攻撃的な旋律が
かなりの追移法を駆使したスケルツオだった。
第4楽章は、自由なソナタ形式であったが、展開部でかなりもたれた表現になっていた。
私は、これをかなりの減点として厳しく聴いていて、ちょっと整理できてないことを感じ、
少しもの足らなかった。
全体的に、長く難しい曲という印象だった。70分くらいの演奏時間はちょっときつい。
もっとまとまっている曲だったらよかったのに...

1997年1月18日(土) NHKホール
イルジー・ビュロフラーヴェク指揮
NHK交響楽団
リリヤ・ジルベンシュタイン(ピアノ)
1.ラフマニノフ作曲 ピアノ協奏曲第3番
2.ドヴォルザーク作曲 スラブ舞曲第1集 作品46(全曲)
1曲目は、ラフマニノフ作曲 ピアノ協奏曲第3番です。
ラフマニノフの作曲技術の集大成ともいえる3番ですが、これをまったく力むことなく、
ピアノを弾ききったリリヤ・ジルベンシュタインの力量に感服した。
このピアニストは女性なのですが、ピアノの質はかなりのもので、ラフマニノフの本質と女性らしさを
完全に演じきっていた。難しい曲として有名な3番、しかも50分近い演奏時間を完璧に近い内容で演奏しきったことは、
さすが、国際コンクールで審査員を納得させたほどの人だ!と思わざるをえない。
いい演奏を聴いた。
2曲目は、指揮者のイルジー・ビュロフラーヴェクの十八番、ドヴォルザーク作曲 スラブ舞曲第1集 作品46(全曲)。
チェコを代表するイルジー・ビュロフラーヴェクは、カラヤンコンクールで優勝したほどの腕前。期待できる。
さて、演奏はイルジー・ビュロフラーヴェク自身何度も演奏したことがあるであろう、
かなり細部にわたって指示されていた質の高い演奏だった。
これはもう舞曲(ダンス)ではなく、一つの交響楽だと思った。
隙のない演奏が、全8曲をシンフォニーにしてしまった。
改めて、サロンミュージックとしてのスラブ舞曲を芸術として認識した。

1997年2月24日(月) サントリーホール
若杉 弘指揮
NHK交響楽団
1.メシアン作曲 聖体秘蹟への賛歌(日本初演)
2.ブルックナー作曲 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
メシアンの聖体秘蹟への賛歌は、日本初演ということもあり、好奇心を持って聴くことができた。
メシアンにしては、聴き易く、短い曲であった。
生命の躍動らしき感じがしたが、曲名から解釈するのは難しかった。
ブルックナー作曲 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」は、昔から知っている曲だったので、
安心を持って聴くことができた。
席が前から2列目だったので、ブルックナー様式を楽しむことができなかったのが残念だったが、
NHK交響楽団のコンビネーションを目の当たりにできたので成果はあった。
指揮者の若杉氏の解釈はかなり保守的で面白みにかけていたので、もし音響のよい席に
座っていたとしても100%発揮したブルックナー様式のはありつけなかっただろう。
第1楽章は、ブルックナーらしさがほんの少ししか感じられなかった。
冒頭の神秘的な森を表すと言われているトレモロなんて、オーケストラの実力の30%くらいしか出ていなかった。
と思った。
第2楽章は、弦楽器主体なのでそこそこの出来だった。管楽器とのコンビネーションもそこそこだった。
この時のオーケストラの実力は50%くらいは出ていただろう。
第3楽章は、ようやく曲に乗り始め、エンジンがかかってきたように思えた。
金管楽器の低音がおなかにずしずし響きわたり、中低音の弦楽器が、ドイツ的なサウンドを作り出していた。
この時のオーケストラの実力は70%くらいは出ていただろう。
第4楽章は、まあまあの出来になった。
大変な感動、というまでもないが、まとまりのある解釈だったので聞き易かった。
この時のオーケストラの実力は80%くらいは出ていただろう。

1997年3月1日(土) NHKホール
イヴァン・フィッシャー指揮
NHK交響楽団
ミクローシュ・ペレーニ(チェロ)
1.ドヴォルザーク作曲 チェロ協奏曲
2.ブラームス作曲 交響曲第1番ハ短調 作品68
ドヴォルザーク作曲 チェロ協奏曲は、彼がアメリカで作曲した最後の曲で、ちょうど第2楽章を作曲中、
彼の初恋の人(彼の妻の姉)が病に倒れるという事件もあり、この曲には、アメリカの黒人霊歌、民謡、
彼の初恋の人が好きだった彼の小曲、ボヘミア民謡(彼の出身地)が、織り込まれています。
独走者と指揮者は、ハンガリー出身なのでボヘミアに近いせいか、なかなかよいドヴォルザークを演じていた。
なかなかの名演奏だったのか、曲が終わると何度もチェリストを舞台に呼んでいた。
そんな中、チェリストはアンコールとして、バッハ作曲 チェロ組曲から「サラバンド」という曲を演奏してくれた。
ブラームス作曲 交響曲第1番は、ドイツ的、古典的な重厚な演奏をする人がほとんどなのに、
指揮者は、かなりロマン派音楽を意識した流ちょうな解釈で演奏していた。
なかなかよかった。特に第1楽章のコーダは、落ち着いて聴けた。
演奏が終わると、自分の席の左右と前の人が「ブラボー」を連発していた。
自分もそれだけの価値はあったと思う。

1997年3月7日(金) NHKホール
朝比奈 隆指揮
NHK交響楽団
1.ブルックナー作曲 交響曲第8番 ハ短調(ハース版)  
音楽は生きている! 演奏中に自分は思った率直な感想である。
今日(3/7)のNHKホールは、異様な雰囲気の渦に巻き込まれていた。
世界最高齢の 朝比奈 隆(89歳)を迎えて、NHK交響楽団が奏でる
ブルックナー作曲 交響曲第8番 ハ短調(ハース版)は、まさに生きていた。
指揮者の朝比奈氏は、ゆっくりとステージに向かい、深々と一礼すると
NHK交響楽団に向かって、おもむろに指揮棒を振り上げた。
その瞬間からなんとも言い難いブルックナーサウンドが自分を包み込み、身震いした。
この交響曲第8番は、当時誰も理解しなかったブルックナーの音楽をなんとか認めてもらおうと、
完成から6年もの月日を費やして、いろいろなオーケストラに頼み込んで、ようやく初演してもらった
曰わく付きの曲です。
初演は、世界から名だたる人達(ブラームスもいた)が集まり、1楽章が終わる毎に
ブルックナーへの拍手が起きたと伝えられている。
ブルックナーは、この第8番の交響曲で、ようやく勝利したのだ。
こんなエピソードがこの演奏にも感じ取れた。
この演奏から自分の解釈を書く。
第1楽章 老兵(朝比奈氏)が、自分の生きている証明を刻むため、心を一つに決めて、
戦いを挑む決意を表現している。淋しさ、苦しさをはねのけ、孤独に打ち勝つ姿は、
まるで、当時誰も理解しなかったブルックナー自身が、戦っているようである
第2楽章 まさに不安との戦いである。
朝比奈氏はまるで、若者のように指揮棒を高々と振り上げ、突き進んでいた。
その姿は、晩年の横綱千代の富士のようだった。
朝比奈氏は、この時点で完全にオーケストラと一体化していた。
第3楽章 まるで朝比奈氏の人生の回顧録のような歴史が感じられた。
89年も生きていたら、山も谷もあっただろう。
大阪フィルハーモニーの創設、
北京交響楽団、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、シカゴ交響楽団の指揮など偉業は数知れず。
朝比奈氏の威風堂々とした演奏は、これらの積み重ねを越えて到達した至上の喜びを
表現しているようだった。
シカゴ交響楽団のメンバーは、「朝比奈氏のような古典的な演奏を実現する指揮者は、
世界にはもういない。朝比奈氏と競演できたことは、幸福としかいえない。」と語ったという。
第3楽章を聴くと、この意味を理解できたような気がした。
第4楽章 思い切り力んで一気に爆発するように出だしを演奏する指揮者がほとんどであるが、
朝比奈氏は、まるでカジュアルな服装で散歩するかのように、リラックスした感じで出だしがスタートした。
こんなところに巨匠としての風格が感じられる。
朝比奈氏は、まるで自分の手足のようにオーケストラを掌握していた。
トロンボーン、トランペット、ホルン、ワーグナーホルン、チューバといった金管楽器たちは、
一致団結した乱れのない演奏をしていたし、
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスといった弦楽器たちは、完全に統制されていた。
フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴットという木管楽器たちは、自分たちの持っている力を100%
出し切っていた。
ティンパニ、シンバル、トライアングルといった打楽器たちは、理性ある誇り高い演奏をしていた。
曲が終わると、NHKホールは、歓喜の渦に巻き込まれた。「ブラボー」の声が、数十人、数百人規模でこだましている。
そして奇跡が起こった。観客の全てが、立ち上がり、スタンディングオーベーションしたのだ。
こんなコンサートは、生まれて初めてである。自分も2階席から1階席へ駆け込み、惜しみない拍手を贈った。
オーケストラが舞台から去った後も拍手はなりやまず、朝比奈氏は、2回ほど姿を現し、観客に対して深々とお辞儀をして
答えていた。
このコンサートは、一生に残る思い出として自分に刻みこまれた。

1997年5月17日(土) NHKホール
イルジー・コウト指揮
NHK交響楽団
1.スメタナ作曲 交響詩「わが祖国」(全曲)
コウト氏は、チェコの出身で、自国の作曲家スメタナの作品は十八番。
よって、随所にチェコらしさが表現されていたが、なにかもの足らない。
「わが祖国」の中でもっとも有名なのが、2曲目の「モルダウ」だが、
全くノーマルな解釈で、比較的きれいにまとめすぎなのが残念だった。
もっともよかったのが、5曲目(最後の曲)の「ブラニーク」。
まあ、フィナーレなので盛り上がらなければ意味がないのだが、完全燃焼とまでは、いかなかったようだ。
でも、13:30からの室内楽コンサート(定期演奏会の開始前にNHK交響楽団のメンバーーが
余興でやってくれるコンサート)で、今年の3月に入団した
新人のヴァイオリニスト 谷野 響子さんの演奏が聴けてよかった。谷野さんは、かなり美人です。

1997年5月22日 NHKホール
イルジー・コウト指揮
NHK交響楽団
フランソーワズ・ポレ(ソプラノ):イゾルデ、ジークリンデ
ウォルフガング・ノイマン(テノール):ジークムント
ハンス・ゾーティン(バス):フンディング
1.ワーグナー作曲 楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
2.ワーグナー作曲 楽劇「ワルキューレ」第1幕(演奏会形式)
「トリスタンとイゾルデ」は、出だしこそばらついていたが、何ともいえないソプラノが歌うラブソングは実にうまい。
あっというまに20分が過ぎてしまった。
休憩後、「ワルキューレ」の第1幕が、演奏会形式で演奏された。
切れの良いサウンドが全体を支配しており、字幕つきだったので、何を歌っているか、
どんな場面かがよくわかったこともあり、ストーリーの音楽的表現は、なかなかのものと思わざるをえない。
あれだったら、全3幕すべて聴きたいものだ。
残念だったのが、自由席だったので字幕が遠すぎて、よく読めないこと。
やはり、オペラはTVで見るできか?

1997年6月13日(金) NHKホール
シャルル・デュトワ指揮
NHK交響楽団
イレーナ・グラフェウナー(フルート)
1.モーツアルト作曲 フルート協奏曲第1番
2.マーラー作曲 交響曲第5番 嬰ハ短調
前座として、モーツアルトが演奏された。フルート協奏曲第1番である。
モーツアルトがフルートという楽器を好んではいなかった為、切れのいい曲ではない。
曲がこんな感じなので、演奏家の器量が演奏の価値のほとんどを決めてしまう。
ということで、フルート独奏のグラフェウナー女史ですが、少々緊張気味でこれまた切れのいい演奏ではなかった。
雰囲気だけが伝わるといった感じでした。
まあ、技術的には高い演奏だったと思うのだが.....
さて、休憩をはさんで、待ちに待ったマーラーが登場する。
まず第1楽章のトランペットソロだが、堂々とした風格のあるサウンドだった。
これだけでもこれからの演奏に期待がもてた。
この曲はよく力強く演奏する方が多いのだが、デュトワ氏は常に理性を持った力強さで全体をまとめ上げていた。
(チェロたちはかなり力んでいたが...)
ホルンもホールに広がるホルンらしい柔らかな音だったし、弦も美しかった。
特に第4楽章のアダージェットは最高で、NHK交響楽団の弦楽器セクションの質の高さが
曲全体を覆い尽くしていた。
全曲が終了すると観客の拍手と「ブラボー」の声が怒濤のようにわいてきた。
最高のマーラーだったからだ。
私も思わず立ち上がっての拍手を贈った。

1997年10月14日(火) 名古屋市民会館大ホール
ベルナルト・ハイティング指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
内田 光子(ピアノ)
1.シューマン作曲 ピアノ協奏曲 イ短調
2.ベートーヴェン作曲 交響曲第3番 変ホ長調 「英雄」
3.ヨゼフ・シュトラウス作曲 ポルカ「天文の音楽」(アンコール)
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパンも今年で終わり。
小沢、ショルティ、レヴァイン、メータと指揮者も多彩だったが、今年は巨匠ハイティング。
保守的演奏とよく言われるハイティングですが、実際にライヴを聞くと、実に整理され考え抜かれた
演奏をする指揮者だとわかった。
まず、シューマンのピアノ協奏曲ですが、世界を代表する女流ピアニスト内田光子の個性である、
柔軟でまるでシューベルトのようなやさしさと強さを持ったピアノを十分に引き出した好演でした。
ハイティングの絶妙なオケさばきが、ピアノとオーケストラの音を絡ませる。
流れるような音の流れを肌で感じ取れる演奏でした。
内田光子も満足そうでした。
それから「英雄」ですが、正統的ベートーヴェンといった感じの演奏で、
ウィーンフィルも「英雄」は十八番のはずなのに、目が離せないって感じで細かいアクセント、
バランスを気にしながら一所懸命に演奏しているのがありありとわかる熱演でした。
特に第一楽章でよく聞かれるクレッシェンド、第4楽章のフーガなどは聞き応えがありました。
それとホルンが代表するように金管の響きも最高で、ウィーンフィルでしか成しえないサウンドを
名古屋市民会館全体で受け止めている感じで、1階席5列目にいた自分も身震いするくらいの
反響を体験できよかった。

1997年11月27日(木) 愛知県芸術劇場コンサートホール
エマニュエル・クリヴィヌ指揮
ヨーロッパ室内管弦楽団
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
1.プロコフィエフ作曲 古典交響曲 ニ長調
2.ベートーヴェン作曲 ピアノ協奏曲第1番 ハ長調
3.スカルラッティ作曲 ピアノソナタの1部(アルゲリッチのアンコール)
4.メンデルスゾーン作曲 交響曲第4番 イ長調 「イタリア」
会場が愛知県芸術センターのコンサートホールなので、残音の良さに期待してその通りの響きの良い演奏が楽しめました。
一番手は、古典交響曲。
第1楽章では、弦楽セクションの音色のばらつきが目立ち、N響のようなドイツ的ではなく、
ウィーンPOのような美しさは感じられず、やはりヨーロッパ混成オーケストラだけあって、
一人一人の個性がもろに出ているなあと思った。
しかし管楽セクションの全員が楽器を響かせていた。
よって、pやmpよりもfの方が全体のまとまりがよかった。
第2楽章になると、pやmpが多いのですが、第1楽章よりはアンサンブルがしっかりしてきた。
やはり室内オケらしい一面を見ることができた。
第3楽章、第4楽章になるとフルートとヴィオラが頑張りはじめアンサンブルが引き締まってきた。
テンポも速めだったので、オケが乗ってきたという感じがした。
ニ番手は、ピアノ協奏曲第1番。
第1楽章は、オケとアルゲリッチとの協奏ではなく、アルゲリッチの独奏っていう感じで、
オケとピアノがはまってない。
去年のN響&ディトワ&アルゲリッチのショパンを聴いている私にとって残念な演奏だった。
第2楽章になるとようやく協奏かな、と思えるようになった。
明らかにアルゲリッチが変化したのではなく、ヨーロッパ室内Oが変化したのだと判った。
それは、管楽セクションがピアノに反応して演奏が機敏になったからだと思った。
フルートとピアノの掛け合いは、なかなか聴けるものではないほど洗練されたものだった。
第3楽章は、乗ってきた!乗ってきた!と思えるほど以前の演奏が嘘のような心地よい快演だった。
アルゲリッチの弱音から強音への音色はすばらしく、音に色でも付いているのでは?と思えるほど
ビジュアルだった。
また、アルゲリッチはアンコールを演奏してくれた。
曲は、スカルラティのソナタ。アルゲリッチのリサイタル気分も味わえてよかった。
三番手は、イタリア交響曲。
これもやはり管楽セクションの優秀さが目立った演奏だった。
しかし、ヴィオラとチェロががんばったおかげでアンサンブルとしてはまあまあよかった。
演奏自体では、かなり詳細な気配りが目に付いた。
特にリズムを刻む箇所では本当に楽しんでいるなあと感じるくらい気持ちよい演奏をしていた。
聴いていて私も一緒に演奏したくなる衝動にかられ、ヨーロッパ室内Oの魅力はこんな所にあるんだなあ、
と感じました。