コンサート感想 2013

2013年2月24日(日)愛知県芸術劇場コンサートホール
準・メルクル指揮
NHK交響楽団
ヘルベルト・シュフ(ピアノ)
新山理恵(オルガン)


1.リスト作曲 交響詩「レ・プレリュード」
2.リスト作曲 ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
3.サン・サーンス作曲 交響曲 第3番 ハ短調 作品78
アンコール:
J.S。バッハ作曲 ブゾーニ編曲 コラール前奏曲
「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」BWV639


リスト作曲 交響詩「レ・プレリュード」 は、この作品にはフランスの詩人ラマルティーヌの
『新瞑想(めいそう)詩集』(1823年)に含まれている同名の詩「レ・プレリュード」の要約が標題として付けられております。

「人生は死への前奏曲」という意味とはこうあるべきなのだろうと思われます。
まず、前奏は荘厳で重いイメージから、アレグロに乗せてテンポよくリズムにのって進んでいきます。
壮大な宗教観、世界観を表すとは、さすがリストです。

リスト作曲 ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調は、1832年から作曲に着手され、1835年に一通り完成されたと考えられていますが、
このときはまだ普通の協奏曲のように3楽章構成でありました。
その後、幾度も改訂される過程でトライアングルが用いられ、タイトルは一時的に《交響的協奏曲》となるらしい。
それは、リトルフ(音楽家に献呈された人物)の作品から少なからぬ影響を受けたと思われるようです。
そう聞くと《交響的協奏曲》そのものですね。

サン・サーンス作曲 交響曲 第3番は、ロンドン・フィルハーモニー協会の委嘱で1886年作曲され、
同年5月のロンドン初演も、翌年のパリ初演も成功を博したようです。
パリ初演の折、この曲に感激したシャルル・グノーは、指揮台を降りて楽屋に戻るサン・サーンスを見て
「フランスのべートーヴェンが行く!」と叫んだという。
第1楽章第2部と第2楽章第2部のオルガンの響き、第2楽章全般の4弾ピアノのアルペッジョなどは、
凄い影響を受けて出来ているんだなあと思います。
とくに第2楽章第2部のオルガンでハ長調の和音による怒濤のような音が、単なる付属品ではないことを
知ることこそが需要なのでしょう。

まさにヴォラボー様様です!



2013年4月3日(水)愛知県芸術劇場コンサートホール
尾高忠明指揮
トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン&名古屋フィルハーモニー交響楽団
小山実稚恵(ピアノ)

1.「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」のための前奏曲『イントラーダ』”INTRADA”
2.ベートーヴェン作曲 ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 Op.58(ピアノ/小山実稚恵)
3.マーラー作曲    交響曲 第5番 嬰ハ短調
アンコール
ワグナー作曲      歌劇「ローエングリン」から第3幕への前奏曲


まず、ウィーン国立歌劇場とウィーンフィルハーモニーの約30名の演奏で、「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」
のための前奏曲『イントラーダ』”INTRADA”が演奏されました。
モーツァルトの交響曲を愉快な題材で演奏された物で、チェロ以外は立ってスタンディングプレーしておりました。

ベートーヴェン作曲のピアノ協奏曲第4番では、小山実稚恵という日本を代表するピアニストを冒頭から推進性あふれた才能で
一気に演奏しております。
顔を揚げたり、一心不乱の高揚だったり、目をつぶってピアノに語りかけたり、本当に尽きない演奏でした。

マーラー作曲の交響曲第5番では、冒頭部にトランペットで葬送を吹きますが、実はウィーントランペット(☆)という
特別な演奏となります。

☆うんちく☆
ウィーンフィルの管楽器と言えば、独特の構造・メカニズムをもつ楽器ぞろいで、使われるのはウィーン周辺に限られます。
1970年代初めのこと、伝統を重んじるウィーンフィルでは、伝統的な管楽器の存続に危機感を感じていました。
そこで、ヤマハ管楽器は世界へ向けて羽ばたこうと手を挙げたのでした。
今でも静岡県浜松工場でウィーントランペットの独特の構造・メカニズムをチェックしています。

またホルン自体もウィンナホルンを使っており、第3楽章では派手やかなサウントで観客を魅了してやみません。

さて、たぶんクラリネットの浅井崇子さんかと思いますが、B♭管やA管のソプラノ・クラリネットを使っていることを
発見してしまいました。
最も標準的なクラリネットであるB♭管と管弦楽では標準的なクラリネットであるA管では、場面毎で分けています。
たとえば、スーザではB♭管、モーツァルトはA管が多いですね。
なのでマーラー自身もその事を理解して使っていたのではないかと推測しますがどうでしょうか?

アンコールでは、ワグナー作曲の歌劇「ローエングリン」から第3幕への前奏曲を演奏し、
マーラーの交響曲とワグナーの楽劇との共演かも、と思いました。



2013年5月25日(土) 名古屋市千種区にあるメニコンANNEX(メニコン本社)
HITOMI HALL Selection 2013 Vol.1 斎藤雅広ピアノコンサート


1.ファリャ 火祭りの踊り
2.ショパン 雨だれの前奏曲
       革命のエチュード
       夜想曲 第2番 作品9-2
       マズルカ 嬰ハ短調 作品6-2
       マズルカ ロ短調 作品33-4
       スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31
       ポロネーズ 嬰ハ短調 作品26-1
       英雄ポロネーズ 変イ長調 作品53
3.ドビュッシー 金色の魚~組曲「映像」第2集より
         月の光~「ベルガマスク組曲」より
         グラドス・アド・パルナッスム博士~組曲「子供の領分」より  
         喜びの島
アンコール
ショパン 遺作 ノクターン 嬰ハ短調

斎藤雅広氏は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団の
メンバーなどとの共演を重ねている凄腕ピアニストであります。
しかも、スタインウェイ・アンド・サンズのピアノでやっぱりやるね、とニンマリ。
今回は抽選で当たった100名をご招待ということで、感無量で行ってまいりました。
火祭りの踊りでは、ピアノを思いっきり叩くシーンがあり、凄いと感心しましたし、雨だれの前奏曲や
革命のエチュードでは、“絶対”を感じさせる演奏が聴けました。
英雄ポロネーズでは、スピーディーなテンポで少し速すぎというから大丈夫か?と思わせるシーンがありました。
ドビュッシーで一番良かったのは、「喜びの島」ですかね。
のだめカンタービレで、野田さんの「喜びの島」を語っていましたから・・・
アンコールで、家族と共に遺作として語り合う「ノクターン 嬰ハ短調」が演奏されました。
さて、一番面白い事件ですが、これは笑えるので載せておきます。
昔、12音部を連拍するシーンがありました。
斎藤雅広氏は、ピアノを一生懸命弾いているのですが、ふと気が付くと、
観客で赤ちゃんから母親にオッパイを吸わせている!?ではありませんか。
そうなると、今3音部目なのか、4音部目なのか、不明となってしまいました。
十分やばかったのですが、セーフで怖かったのはこのシーンのみでしょう・・・
なんとかクリアしましたけどね。


2013年7月12日 三井住友海上しらかわホール
第128回定期演奏会 ~七月の光遺稿のピアニシモ~(俳句・齊藤一郎)

齊藤一郎指揮

セントラル愛知交響楽団

1.林光:北寿老仙をいたむ(林光遺作・世界初演)
2.ベートーヴェン:交響曲第9番二短調Op.125「合唱付き」

大須賀園枝(ソプラノ:名古屋芸術大学卒業)
三輪陽子 (アルト :愛知県立芸術大学卒業)
中鉢聡  (テノール:東京芸術大学卒業)
能勢健司 (バリトン:愛知県立芸術大学卒業)
名古屋芸術大学第九合唱団(合唱)

合唱指導:山田正丈

まず、林光の「北寿老仙をいたむ」という遺作が演奏されました。
弦楽器が分散和音から7度の和音に向かうとすぐに不協和音に映るとは、遺作の事はあるなあと思います。
特にCelestaとの兼ね合いは弦楽器以上に実に面白い。
世界初演ということで、まあまあの出来かと思います。

15分の休憩の後に、ベートーヴェンの交響曲第9番が演奏されました。

第1楽章では、冒頭の弦楽器のトレモロ、神秘的な空虚五度の和音、やはり素敵な演奏です。
コーダの不気味な半音階オスティナートは、大きな律動感を与えていると思います。
なので齊藤一郎を「日本のカラヤン」と命名しましょう。

第2楽章では、ティンパニが活躍するいわゆる「ティンパニ協奏曲」と言われる左右逆の連打は
見事としか言いようがないです。
しかしテンポが合いにくく、「日本のカラヤン」ではなく、「田舎の外山雄三?」かもしれません。

第3楽章では、2つの主題が交互に現れる変奏曲の形式なので飽きません。

第4楽章では、第1楽章から第3楽章まで回想するのを否定して歓喜の歌が提示される姿は泣かせます。
しかし合唱に入るとffの連打の応酬で、これでは単なる強打叩きです。とはいえ、トライアングルからくる男性の掛け合いシーンは痺れました!
あとは、大須賀園枝さんの方が若々しい歌声にうっとりかもねと思いました。

最後に拍手で終わりますが、アルトの三輪陽子さんの靴が抜けなくなっていまい大変面白い一面が見れました。



2013年11月2日 多治見修道院ワインフェスタ2013
丸山晶子(ピアノ)

リスト    愛の夢
シューベルト 連祷
リスト    連祷
シューベルト 水の寄せて歌う
リスト    水の寄せて歌う
ショバン   プレリュード Op.28より、第7番、第15番「雨だれ」
ショバン   スケルツォ第4番 Op。54
アンコ-ル

シューマン  トロイメライ

リストの愛の夢には1番から3番までありますが、一番有名な3番を演奏しましたがすぐ引き込まれました。

メロディの豊かなタッチに自信があるのでしょうねえ。
ショバンのプレリュードで一番うれしい太田胃散のCMの第7番でしょう!
また「雨だれ」には聴く耳があれば喜ばしいかもしれません。
スケルツォ第4番には難しいタッチに一番の集中力できる結果が出ていました。
アンコールでは暗譜でトロイメライをゆっくりしたテンポで弾いていました。
凄く自信たっぷりでしたね(^^)




2013年11月7日 愛知県芸術劇場コンサートホール

指揮:クリスティアン・ティーレマン
Christian Thielemann
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Wiener Philharmoniker

1.ベートーヴェン:「エグモント」序曲 op.84
 Ludwig van Beethoven: Overture, “Egmont” , op. 84
2.ベートーヴェン: 交響曲第1番 ハ長調 op.21
 Ludwig van Beethoven: Symphony No. 1 in C major, op. 21
3.
ベートーヴェン: 交響曲第3番 変ホ長調 op.55「英雄」
 Ludwig van Beethoven: Symphony No. 3 in E-flat major, op. 55 “Eroica”

普通は、レオポルド・ストコフスキーという音の魔術師が、順番に1stバイオリン、2ndバイオリン、ビオラ、 チェロ、その後ろにコントラバスというように並びます。
これは一般的な配置です。
しかし、ウィーンフィルでは、オーケストラの配置がヴァイオリンを両翼に分けてあります。
19世紀まではこの配置とされていますので、ベートーヴェンであれば納得です。
なお、ウィーンフィルに女性がいない!と問題視されていますので、ヴァイオリン 2nd、チェロ、フルート 2ndには女性が配置されております。
これも時代です。

まず、「エグモント」序曲です。
重々しい重厚な激しさある冒頭から始まり、総休止のあと英雄エグモントの死の要素が待っていますが、
コ-ダの部分で、フルート、オーボエ、クラリネット、ファコット全員で高音で奏でるシーンが素晴らしい!
次に交響曲第1番が演奏されました。
若いベートーヴェンの作品で、第1楽章から身を乗り出して聴き入っています。
第2楽章では、変奏曲からの歌曲に近い路線を打ち破って、緩徐楽章でヴァイオリン 2ndからのソナタを奏でるとは、
大した度胸かと思います。
第3楽章ではスケルツォで、第4楽章ではゆったりとした導入部から音楽が疾走するなんて、
しかもティーレマンさんが快走する指揮者ぶりに満足な演奏かと思います。
最後に交響曲第3番「英雄」が演奏されました。
初めは普通の演奏かなあと思っていましたが、ティーレマンさんがどっしりとした重厚な音楽を用いてテンポも重要ですが、
ここは小さく、ここは大きくを細やかに指示しており、納得の指揮ぶりです。
第1番の第2楽章は対位法的でありますが、第3番の第2楽章も全く同じ緩徐楽章かもしれません。
第3楽章の英雄的業績も存在し、第4楽章はかけあいが強烈で強調され音楽的に広がっている自分がいるような気分になりました。
最後に拍手で自分もすっきり・・・愛知県芸術劇場コンサートホールを後に帰りました。



2013年11月20日(水)愛知県芸術劇場 コンサートホール

第32回 名古屋銀行チャリティーコンサートに行ってきました。

クラリネット:亀井良信

指揮者:マックス・ポンマー
演奏:名古屋フィルハーモニー交響楽団

メンデルスゾーン  序曲『フィンガルの洞窟』 作品26
モーツァルト    クラリネット協奏曲イ長調 K.622*
ベートーヴェン   交響曲第5番ハ短調 作品67『運命』

マックス・ポンマーさんは、1936年ライプツィヒで生まれで、ヘルベルト・ケーゲルや
ヘルベルト・フォン・カラヤンという指揮者に学んだ方です。
また、亀井良信さんは、桐朋高校音楽科卒業後、パリ・ポールディカ音楽院などで
満場一致で1位で卒業するクラリネット有名人です。
ということで、発売当日に午後から愛知芸術文化センターでチケット買おうとすると、
もうすぐで完売しますからよかったですね、と言われましたのが印象的かもしれません。

この名古屋銀行チャリティーコンサートですが、何と1,000円で聴けるという素晴らしい企画です。

まず、メンデルスゾーン作曲の序曲『フィンガルの洞窟』が演奏されました。
3流化しているのでは?と思うくらい『フィンガルの洞窟』のあの壁画を思い起こすが全然見えない・・・
マックス・ポンマーさん、やばいよ~

しかし、モーツァルト作曲のクラリネット協奏曲では、息を吹き返すようにA管(イ調)クラリネットが踊っています。
モーツァルトの考えたリズムを思う存分マウスピースで語っております。
昔、私は第3楽章を口笛を吹きながら登山したので結構好きです。

最後にベートーヴェン作曲の交響曲第5番ハ短調が演奏されました。
第1楽章からロンドン・クラシカル・プレイヤーズ的解釈でドイツの片田舎で演奏しているようで、
いつから名古屋フィルがロンドン化しているのか?と思います。
(イギリスの古楽器オーケストラをロンドン化と言い換えていますので・・・)
第2楽章は、いつものテンポより速いテンポ、たぶんアレグレットのような速度標語で進んでいます。
しかも、スタッカートで区切って演奏している点からもロンドン化にあう計算があるようです。
第3楽章は、早いテンポでコントラバス、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリンのかけるシーンが圧倒されます。
第4楽章は、普通のテンポで進みすが、ピッコロのうるさいくらいの響きに、逆に心地よい快感さえ思えます。

全体的に前半を除いてすっきりした演奏ではないかと思いました。

アンコールで、メンデルスゾーン作曲の弦楽八重奏曲変ホ長調作品20から第3楽章スケルツォが演奏されました。