コンサート感想 2021

2021年02月13日(土) 愛知県芸術劇場コンサートホール

名古屋フィルハーモニー交響楽団
愛知県芸術劇場コンサートホール
横山奏(指揮)

プログラム
1.ウェーバー:歌劇『オイリアンテ』 作品81(J.291)序曲
2.ワーグナー:ジークフリート牧歌
3.ブラームス:交響曲第2番ニ長調 作品73
アンコール曲
メンデルスゾーン:劇音楽「真夏の夜の夢」op.61 より スケルツォ


何を聴いたかというと・・・
息づかいと目の鋭さからの感覚と調和を重要として聴きました。

特に、指揮者前のチェロ集団のあっちこっち見渡す洞察力が半端でないのです。
なかなかお目にかかれないパフォーマンスは、最高かもっと思います。

しかも、ブラームスの交響曲第2番では、
圧倒的弦楽器と管楽器との掛け合いをチェロ集団として捉えれば
まずまずの聴きやすいポジションでしょう。










2021年04月23日(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール

名古屋フィルハーモニー交響楽団
愛知県芸術劇場コンサートホール
沼尻竜典(指揮)
神尾真由子(ヴァイオリン)

プログラム
1.モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218*
2.ショスタコーヴィチ:交響曲第11番ト短調 作品103『1905年』
アンコール
エルンスト:シューベルトの『魔王』の主題による大奇想曲 作品26

2007年に第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、
世界中の注目を浴びた神尾真由子(ヴァイオリン)。
ヴァイオリン協奏曲第4番は、
通称として『シュトラスブルガー』や『シュトラスブルク協奏曲』、
『軍隊』などと呼ばれることがあります。
今回は、モーツァルトで、美貌を追求しました。
きめ細やかで滑らかな美音や鮮やかなテクニックと
豊かな表現力が魅力的かと思います。

アンコールとして、
エルンスト:シューベルトの『魔王』の主題による大奇想曲 作品26
ヴァイオリン無伴奏を演奏しました。
魔王ですが、ヴァイオリンソロの三連符が五月蠅い(うるさい)ようで。
馬のひづめのリズムを三連符で終始表現しております。
ヴァイオリンの曲の中では、技術的にはこの曲が一番難しいのでは
ないでしょうか。

ショスタコーヴィチ:交響曲第11番ト短調 作品103『1905年』

ドミートリイ・ショスタコーヴィチの交響詩的な印象を与えるであろう標題交響曲。
ペテルブルク宮殿に向かって行進する無防備の民衆に対して軍隊が発砲し、
千人以上を射殺した、いわゆる「血の日曜日事件」(1905年)を
題材としております。
サイレント映画『戦艦ポチョムキン』に1シーンにも期した形で
不吉なトランペットの合図とともに皇帝軍の一斉射撃が始まり、
宮殿前には虐殺の光景が繰り広げられるのは圧巻です。
不屈の民衆の力を誇示するかのように圧倒的なクライマックスが
築かれていますが、
イングリッシュホルンに悲しげなメロディが奏され、
最後はチューブラーベルの乱打が帝政ロシアへの警鐘を示す内容で
終曲となります。
国家権力の国民へのテロに対する怒りと、
失われた貴い命への慟哭を音楽に表現したショスタコーヴィチ。
高い職業倫理を守り抜き、オーケストラから
高い水準の音楽を生み出すのは凄すぎ。
ものを見ると目に像が映る。
見るのをやめて視線をそらすと、今度はそれが残像として目の中に残る。
それが「圧政者らよ、激怒せよ」!なんですね。
これが全てかと思いました。










2021年09月11日(土) 愛知県芸術劇場コンサートホール

名古屋フィルハーモニー交響楽団
愛知県芸術劇場コンサートホール
小泉和裕(指揮/名フィル音楽監督)

プログラム
1.ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調[ノヴァーク版]

金管楽器によるコラールの頻出やフーガをはじめとした厳格な対位法的手法が
結構目立つ演奏です。
ノヴァーク版を考えた場合、
この交響曲を「対位法的」交響曲あるいは「幻想風」交響曲と問えば
パイプオルガンの調べのカトリック風に近いきらびやかのある傑作かなっと
思いました。
カラヤン指揮者の優勝者である小泉和裕さんは、
ある意味、正調ブルックナー!かもね。












2021年10月15日(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール

中部フィルハーモニー交響楽団
飯森範親(指揮)

プログラム
1.チャイコフスキー:オペラ「エフゲニー・オネーギン」より”ポロネーズ”
2.チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調 作品48
3.チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 作品36
アンコール曲
チャイコフスキー作曲 バレエ「白鳥の湖」より ハンガリーの踊り(チャルダッシュ)

チャイコフスキー作曲 オペラ「エフゲニー・オネーギン」より”ポロネーズ”

歌劇「エフゲニー・オネーギン」作品24はチャイコフスキー作曲のオペラです。
プーシキンの韻文小説をもとに1878年に完成されました。
有名な「ポロネーズ」は第3幕冒頭の大夜会舞踏会の場面で演奏されます。
盛大なファンファーレで時が告げられ、チャイコフスキーならではの躍動感と
オーケストレーションが冴え渡り、華麗で華やかな舞踏会の場面が
目に浮かぶような音楽です。
なかなか憎いですよね。
演奏が終わり、客の一部で「凄いなっ」と小さな声で話をするのは確認できましたけど

どうでしょうか。

チャイコフスキー作曲 弦楽セレナード ハ長調 作品48

チャイコフスキーの弦楽セレナード(ハ長調 作品48)は、1880年に作曲されています。
チャイコフスキーが40歳頃に書いた代表作の1つで、
モスクワ音楽院に着任した時からの親友コンスタンチン・アルブレヒトに
捧げられています。
ハ長調という最も単純明快な調性で書かれ、
第2楽章がその属調であるト長調、
第3楽章がそのさらに属調であるニ長調、
第4楽章の序奏が再びト長調、
主部でハ長調に戻るという、
五度関係を用いた、ゆるやかなアーチ状の構成を成した楽曲です。
やはり、
「ど~ し~ ら~ そらどそ~ そ~ふぁみ~」
「みみらそ~ ふぁみれ~ れ~ みみ~ み~ どれみふぁそらしど~」
でしょう。
わかるかな?

チャイコフスキー作曲 交響曲第4番 ヘ短調 作品36

民謡に依存した組曲的な初期の交響曲から、
循環形式への脱皮した名曲っと言われております。
ネガティヴな性格を決定づけた序奏部のあと、
主部は悲哀を引き継いでいます。
序奏部3/4の1拍を3連符的に分割した
[3/8+3/8+3/8]を1単位(1小節)とする9/8のワルツで、
交響曲の第1楽章としては拍子的にも斬新な試みでもあります。
こうした前衛的な試みが数多く見られる4番の意気込みを
感じされますから凄い演奏なんです。
「運命」「嘆き」「夢と願望」の3つのせめぎ合いを軸に展開。
なかなか見事かと思いました。


アンコール曲で
チャイコフスキー作曲 バレエ「白鳥の湖」より ハンガリーの踊り(チャルダッシュ)
が演奏されました。















2021年11月04日(木) 愛知県芸術劇場コンサートホール

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
リッカルド・ムーティ(指揮)

1.モーツァルト:交響曲 第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」
2.シューベルト:交響曲 第8番 ハ長調 D.944 「グレイト」
アンコール曲
ヨハン・シュトラウスII世 皇帝円舞曲 作品437

モーツァルト:交響曲 第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」

抜群の相性を見せるムーティ&ウィーン・フィルのモーツァルト。
祝典的な華やかさに満ちた『ハフナー』、
ムーティはウィーン・フィル伝統の感興豊かなアンサンブルに
溌剌とした生命力を吹き込んでいました。

シューベルト:交響曲 第8番 ハ長調 D.944 「グレイト」

リッカルド・ムーティのウィーン・フィルとの、
上品な美しさとドラマティックな効果が高い完成度を遂げた、
最高のパフォーマンスを発揮してました。

アンコール曲
ヨハン・シュトラウスII世 皇帝円舞曲 作品437
最後にアンコール曲を聴きました











2021年12月10日(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール

名古屋フィルハーモニー交響楽団
川瀬賢太郎(指揮/名フィル正指揮者)
葵トリオ(ピアノ三重奏)*
(ヴァイオリン:小川響子
(チェロ:伊東裕
(ピアノ:秋元孝介

1.カゼッラ:三重協奏曲 作品56*
2.ロット:交響曲第1番ホ長調

ソリスト・アンコール
ハイドン:ピアノ三重奏曲ハ長調 Hob.XV-27より第3楽章

カゼッラ:三重協奏曲

カゼッラ(Alfredo Casella)は1883年に トリノで生まれたイタリア人です。
20世紀におけるヴィヴァルディ作品の復活は、カゼッラの尽力に負うところが大きいようです。
その葵トリオですが、ヴァイオリンの小川響子さん、チェロの伊東裕さん、ピアノの秋元孝介さんによって、
サントリーホールの室内楽アカデミーをきっかけに2016年に結成されました。
2018年に第67回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で優勝するなど、
数々の受賞歴を誇り、現在はドイツを拠点に活動を続けています。

バルトーク(ハンガリー)のようなセンセーションから始まり
スメタナ(オーストリア帝国)の甘いささやきが語りかけて
ラフマニノフ(ロシア)のピアノラフを先制されたインパクトを与え
ムソルグスキー(ロシア)の蚤の歌並みのユーモラスさで
覆いつくされると言う事でなかなか憎い演出家かと思います。

ベートーヴェンの三重協奏曲も作品も56ですから、
完全に意識しているだろうと想像できます。

ソリスト・アンコールとして
ハイドン ピアノ三重奏曲第27番ハ長調 Hob.XV:27より第3楽章が演奏されました
たぶん・・・
1796年に作曲されたものかなっと思います。
1791年にモーツァルトが亡くなっていますので意図していたのかな。
ヴァイオリンとピアノ(クラヴィア)のパートが、
かなり独奏的に扱われていてるので、2重協奏曲のような感じです。

ハンス・ロット作曲 交響曲第1番 ホ長調

オーストリアの作曲家ハンス・ロット(Hans Rott 1858〜1884)は、
ウィーンで学び、オルガンの先生はブルックナーです。
共に学んだ親友はマーラーです。
厚みと華やかさがあるオーケストレーションで、
ロマンティックな情熱、美しい旋律と壮大な展開、
そして、執拗とも言えるほど繰り返されるクライマックスは、
後期ロマン派のオーケストラ作品を聴く喜びをたっぷり味わえる音楽かと思います。

第1楽章冒頭で金管が奏する主題は、循環主題的にほかの楽章にあらわれるが、
ワーグナーのライトモチーフを意識したのだろう。
映画『エデンの東』のテーマ音楽に似たロマンティックな旋律がうっとりです。
一番いい第3楽章は、ホルンの五度音形に続いてトライアングルが鳴り、低弦が動き回る。
まるで、マーラーそっくりです。
もしかして、ロットを模倣してマーラーが作った?
と考えるのが妥当でしょう。