コンサート感想 2023

2023年04月07日 愛知県芸術劇場コンサートホール

第511回定期演奏会
〈継承者/川瀬賢太郎音楽監督就任記念〉

名古屋フィルハーモニー交響楽団
川瀬賢太郎(指揮/名フィル音楽監督)

プログラム
1.ハイドン:交響曲第86番ニ長調 Hob.I-86
2.マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

聴きどころ
音楽監督就任披露は、川瀬賢太郎が愛し選んだ2曲。
“交響曲の父”ハイドンと、その継承者で交響曲というジャンルの頂点を築いたマーラーのシンフォニーです。
古典派作品も近現代作品も、小編成作品も大編成作品も、珍しい作品も人気の作品も、
しっかり取り上げていくという川瀬賢太郎のメッセージを、是非受け止めてください。

名古屋フィルハーモニー交響楽団、第6代音楽監督に就任に伴い、祝の花束が置いてありました。

ハイドン:交響曲第86番ニ長調 Hob.I-86

ハイドンは、パリの出版者からの依頼ではじめて交響曲を書いたときも、楽器編成は
ハンガリーの貴族であるエステルハージ家(楽長経験者)と同じ編成で作曲しました。
しかし、パリ交響曲の最後を飾る二つの作品(この86番と82番「熊」)では、
ティンパニーを追加し、さらにこの86番の交響曲ではトランペットまでも追加してより華やかな作品に仕上げています。
つまり、いかに大貴族とはいえ、宮廷のなかのコンサートと多くの聴衆を収容した
コンサートホールでは求められるものが違うことに気づいたと言うことでしょう。
途中でミノーレ(短調)を含ませて、全体に陰影を与えている所は困難にも動じない
演奏家の一端も見えますからね。
エステルハージ家からザロモンのオーケストラを前提とした音楽の核心を伝えた意思が聴こえました。

マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

ベートーヴェンやショパンとの繋がりを指摘するまでもなく「葬送」。
マーラー自身によっても「葬送行進曲」と題されているこの曲は、
戦場へと聴き手を引きずりこむこの凄絶な修羅場が事実なのでしょう。
つまり、ベートーヴェンを意識した「運命」が「葬送」へと変化したのです。
葬儀を終えたあと、戦場での故人の闘いぶりを、フラッシュバック形式で、より克明に描いた標題音楽的楽章が第2楽章です。
それが解るのが、クラリネットのベルアップと、オーボエのベルアップと、ホルンのベルアップです。
マーラーの交響曲でよく出てくるベルアップの指示。
ベルアップとは、「楽器と上半身を用いて90度以上の角度を形づくること」
また、ホルンに立ち上がれとの指示もある。
つまり、フラッシュバックを忘れて恥を捨てる心意で観客の注意を全て自分へと集中させることに意味があるのではないかと思います。
第3楽章では、5人のホルンが活躍します。
F管のホルン用に作曲し、より進化した「F管+B管」のダブルホルンや、更に複雑なトリプルホルンが基本フォーマットになっているのです。
第3楽章だけがホルン協奏曲になってしまったような受け取り方をされてしまうのは
ステレオ的な両端の掛け合いとして判別し易い点があるみたいですけどね。
第4楽章。
アルマに献呈したマーラーの自筆スコアにはAdagietto の文字があり、この弦とハープだけの楽章となっています。
それは、献呈受諾=プロポーズ承諾と言うアルマへの愛の調べといわれ、まさに女性に聴いて欲しい名曲中の名曲なのでしょう。
魅力あるフレーズに痺れそうです。
第5楽章 ロンド-フィナーレ
ベートーヴェンの〈エロイカ〉の初演が1804年。
そして、マーラーの〈5番〉の初演が1904年。
導入部の陽気さを受け継ぐ姿。
怒涛のような進軍が到達するコーダ。
活きいきと、陽気におどけて、新鮮に!
アルマとの愛の讃歌は、新時代を切り拓いてきた先人達のバトンを受け継いだ創造的天才の凱歌として、輝かしく閉じられるのです。
ブラボーそのものと感じました。

そう考えると、継承者の意味を伝えるのなら人間の心意気を世に問いたいのかなと思いました。
まさに、ジークフリートの「ブリュンヒルデは笑っている」感じではないしょうか。







2023年 ウィーン・プレミアム・コンサート

2023年04月13日(木) 19:00開演
愛知県芸術劇場コンサートホール
一般販売開始公演日:2023年04月13日(木)開場:18:00開演:19:00
会場:愛知県芸術劇場コンサートホール

トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン
ウィーン・プレミアム・コンサート

一夜限りのロマンティックな奇跡日欧特別編成オーケストラを率い、
ロマン派交響曲の重鎮ブルックナーの傑作「ロマンティック」を、
マエストロ・秋山和慶が劇的に奏でます。

【出演】
フォルクハルト・シュトイデ(ヴァイオリン)
ベルンハルト・ハインリヒス(オーボエ)
トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン(管弦楽)
秋山和慶(指揮)
名古屋フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

【曲目】
J.S.バッハ:オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1060
ブルックナー:交響曲 第4番 変ホ長調「ロマンティック」WAB104

アンコール
フランツ・シューベルト:劇付随音楽「キプロスの女王ロザムンデ」〈ロザムンデ〉間奏曲 第3番
ヨハン・シュトラウス2世:「ピッチカートポルカ」

トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン
2000年から2023年で20周記念を迎えました。
ウィーンフィルのメンバーと
名古屋フィルハーモニー交響楽団のメンバーが集う
一夜限りのロマンティックな奇跡をお送りします。

実は、20周年記念と言う事で、
パンフレットの終わりには、
なんと♡マークがあると、
ウィーン・プレミアム・コンサートのCDが貰えるんですよ。
なんてラッキーなのでしょう。

J.S.バッハ:オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1060
フォルクハルト・シュトイデ(ヴァイオリン)
ベルンハルト・ハインリヒス(オーボエ)
諸田由里子(チェンバロ)
トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン(管弦楽)

この曲は3曲構成です。
バッハの3曲構成は大体の場合速度が「速い・ゆっくり・速い」という組み合わせになります。
全体的に親しみやすい主題・旋律で聴きやすい曲だと思います。
特に「第2楽章のアダージョ」は主題をオーボエとバイオリンで延々と繰り返します。
それが全然単調でなく、ずっと聴いていられます。
これがバッハのなせる技というところでしょうか。
まるで海の上を漂っているような、すごく不思議な曲です。

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」WAB104

トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン(管弦楽)
秋山和慶(指揮)
名古屋フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

たぶんですが、1878/1880年稿のノヴァーク版かと思います。
交響曲第4番は、ブルックナー本人も聴衆に受け入れられることを望んだ作品だったようです。
「ロマンティック」という愛称も、ブルックナー本人が友人にあてた手紙の中にバッチリ出てきます。
それによると「ロマンティック交響曲」という呼び方をしています。

第1楽章のホルンは町の庁舎から朝を告げるものだそうです。
第2楽章は普段の生活や歌や祈り、第3楽章が「狩り」の様子を描写していることも書いています。
第4楽章はソナタ形式のダイナミックなフィナーレとなっています。
「ブルックナーユニゾン」も第4番が初めてではありませんが、典型的で完成度が高いかと思います。
実際聴いて見ても、多くの人がそういう情景を思い浮かべると思います。
絶対音楽がうんぬんとか、難しい内容ではありません。簡単な美しい調べが良いようです。

アンコールでは、
フランツ・シューベルト:劇付随音楽「キプロスの女王ロザムンデ」〈ロザムンデ〉間奏曲 第3番 と、
ヨハン・シュトラウス2世:「ピッチカートポルカ」のどちらかを秋山和慶が選ぶコーナーがありました。
結果、「ピッチカートポルカ」が演奏されました。





2023年6月23日(金) オルガン・アワー
愛知県芸術劇場 コンサートホール
オルガン:石丸由佳

【作曲家・演目】
J.S.バッハ:小フーガ ト短調 BWV 578
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 プレリュード BWV1007(ペダルソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV538「ドリア調」
宮川泰:映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』より《白色彗星》
ヴィヴァルディ:《四季より》抜粋 「春」よりⅠ. 「夏」よりⅢ. 「秋」よりⅢ. 「冬」よりⅠ.
シベリウス:フィンランディア

オルガン・アワー
~音のシャワーで心リフレッシュ~

オルガニストが座っているこちらは「メインコンソール」と呼ばれます。
「演奏台」という意味です。
ここはオルガニストが楽器を操るための1番大事な場所です。
手鍵盤、足鍵盤、そして、左右にストップがズラリと並んでいます。
こちらのメイン・コンソールに対して、ステージ上に設置できる「リモート・コンソール」もあります。
つまり、離れた場所から操作できる演奏台で、ステージ上でオルガン本体を鳴らすことができるのです。
「リモート・コンソール」は、「メイン・コンソール」の分身です。
今回は、「リモート・コンソール」で演奏します。

J.S.バッハ:小フーガ ト短調 BWV 578

「小フーガ」の愛称で呼ばれています。
「フーガ(遁走曲)」とは対位法による音楽形式で、ひとつの主題を複数の声部が模倣しながら次々に追いかけて演奏する様式を持つ曲です。

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 プレリュード BWV1007(ペダルソロ)

バッハが独奏チェロの為に書いた唯一の作品ですが、通奏低音楽器を足ペダルで演奏するのです。
足の難しさには恐れ入りました。

J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV538「ドリア調」

トッカータとフーガ ニ短調 には、有名なニ短調(BWV565)とそうではないニ短調(BWV538)があります。
今回は、後者です。
「ドリア調」ですが、BWV565ではテンポもどんどん変わりかなり即興的な音楽でありますが、BWV538はもっとがっしりした曲調・構造になっています。
モチーフには痺れました。

宮川泰:映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』より《白色彗星》

『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のオルガンも聴いたのですが、パイプオルガンの為に書かれた珍しい作品です。
内装で黒青色に変化したパイプオルガンでは、恐怖がテーマの為、怖さの追求を考えてるとパフォーマンスは良かったです。

ヴィヴァルディ:《四季より》抜粋 「春」よりⅠ. 「夏」よりⅢ. 「秋」よりⅢ. 「冬」よりⅠ.

当劇場のパイプオルガンは、国内最大級です。
音色を決めるストップ(音栓)が 93 本、約 1cm から約 11m の長さのパイプが、6,883 本あります。
そこで、ヴィヴァルディの合奏協奏曲《四季》をオルガンでどう演奏するのか?
今回のテーマです。
パイプ6,883本をどう導き出すか?
結果、小鳥も、収穫も、小雪も、結構面白かったです。

シベリウス:フィンランディア

パイプ6,883本には、窓を開け閉めして音量調節する「ブラインドシャッター」(開閉窓(スウェル・シャッター))があります。
オルガンでは、パイプに送れられる風の強さは一定で、強弱の変化をつけることができません。
この欠点を補うために、18世紀以降、一群のパイプを箱(スウェル・ボックス)の中におさめ、
シャッターを開閉して「音量を調節する機構」が取り入られるようになりました。
それをシベリウス作曲のフィンランディアで実現する試みがありました。
シャッターを開閉して音量を調節するブラインドシャッター。
(開閉窓(スウェル・シャッター))。
結構調整出来て良かったです。









2023年7月26日(水)18:45公演

OKAYAチャリティーコンサート2023~感謝の夕べ~

愛知県芸術劇場コンサートホール
園田隆一郎(指揮)
中原梨衣紗(ヴァイオリン)*
沢田蒼梧(ピアノ)**

曲目
メンデルスゾーン:劇音楽『真夏の夜の夢』序曲 作品21
ブルッフ:スコットランド幻想曲 作品46*
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 作品23**

アンコール
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンの為のソナタ 第1番 ト短調 BWV1001 第1楽章 アダージョ
ショパン:子守歌 ニ長調 OP.57

メンデルスゾーン:劇音楽『真夏の夜の夢』序曲 作品21

シェイクスピアの有名な戯曲から霊感を受けて弱冠17歳のときに作曲したという、メンデルスゾーンの天才的な早熟ぶりが遺憾なく発揮された若々しいロマンティシズム溢れる序曲です。

ブルッフ:スコットランド幻想曲 作品46*

スコットランド幻想曲(Schottische Fantasie)作品46は、マックス・ブルッフが、1879年から1880年にかけて作曲したヴァイオリン独奏とオーケストラのための協奏的作品です。正式な題名は「スコットランド民謡の旋律を自由に用いた、管弦楽とハープを伴ったヴァイオリンのための幻想曲」です。
中原梨衣紗(ヴァイオリン)は、愛知教育大付属岡崎中学校で学生音楽コンクール全国大会で優勝した経験から、今回、名古屋フィルハーモニー交響楽団では、2回目の登場です。
スコットランド民謡を大いに取り入れて作曲された本作です。
こんなに親しみやすくていいのかというくらい、耳に優しいメロディーが次から次へと登場します。
なお、アンコールで、J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンの為のソナタ 第1番 ト短調 BWV1001 第1楽章 アダージョが演奏していました。

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 作品23

沢田蒼梧(ピアノ)ですが、2021年の第18回ショパンコンクールで本選通過という素晴らしい経験の持ち主です。
しかも、名古屋大学医学部医学科卒業であり、しかも医師の研修医と言うので、これは本当に凄い事なんです。
冒頭に雄大な序奏がありますが、この始めの部分でピアノが鐘のように重い和音を弾き鳴らし、その背後で第一ヴァイオリンとチェロが、主題を奏でるピアノ協奏曲の中でも特に人気が高い極め付けの名曲です。
これがこの楽章で中心的な主題になるのですが、圧倒的なエネルギーをもって協奏されると大きな盛り上がり最高潮です。
ふさわしい豪華絢爛なフィナーレに、沢田蒼梧(ピアノ)は、最高なのでしょう。
アンコールで、ショパン:子守歌 ニ長調 OP.57が演奏されました。
ショパンコンクールで、もし第3次予選に出ていれば、子守歌を披露したらしいです。
心意気は感じました。








2023年8月31日 (木)18:45

コバケン・スペシャル2023

特別演奏会 2023.8.31 (木) 18:45
愛知県芸術劇場コンサートホール
名古屋フィルハーモニー交響楽団
出演
小林研一郎(指揮/名フィル桂冠指揮者)
ルゥォ・ジャチン(ピアノ/第8回仙台国際音楽コンクール ピアノ部門優勝)*

プログラム
グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16
マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』
アンコール
フォーレ:即興曲第2番ヘ短調
マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』コーダ

今回は、コバケン・スペシャル2023を聴きましょう。
さて、グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16の前に
名古屋フィルハーモニー交響楽団からお悔やみの話がありました。
1987年から1998年にかけて指揮者をしていた飯守泰次郎さんが
2023年08月15日になくなったそうで、
そこで、小林研一郎さんの提案で名古屋フィルハーモニー交響楽団の声を出さない設定で、
グリーク:ペールギュントから第2曲「オーセの死(ノルウェー語版)」を演奏されました。
グリークのオーゼの死としてお悔やみを感じました事、理解しました。

ルゥォ・ジャチン(中国)、LUO Jiaqingは、1999年、中国・湖南省生まれ。
現在、ニューイングランド音楽院でダン・タイ・ソンに師事しています。
ダン・タイ・ソンですが、アジア人で初めてショパン国際ピアノコンクールで優勝した有名人です。
つまり、ルゥォ・ジャチンは、愛弟子になります。

グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16

ルゥォ・ジャチンさんの繊細さと力強さを併せ持ったタッチと、
SHIGERU KAWAIのクリアな響きが相まって、すばらしいサウンドが生まれていました。
北欧の雄大な風景を感じる、美しく多彩な表現力で、魅了されたのではないでしょうか。
もう少し緻密で、かつ、繊細であるならば、超一流になるかも知れませんね。
アンコールで、フォーレ:即興曲第2番ヘ短調が演奏されました。

マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』

円熟の極みに達した巨匠=小林研一郎(桂冠指揮者)のタクトによって感動のフィナーレまで突き進みました巨人。
中庸のテンポで静かな空間に木管が鳥のようにさえずりますが田園風景では終わらず、繊細な表情付けがされています。
結構細かい指示ですが、ホルンも上手く、とても良い雰囲気を出しています。
弦もとても爽やかです。
そしてスケールも大きく盛り上がっていきます。
さすがマーラーです。
コーダのホルンのベルアップはお得意様にような素晴らしさでしょう。
アンコールで、マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』の終焉部分コーダを演奏しました。











名古屋銀行チャリティーコンサート

2023年11月9日(木) 18:45開演
愛知県芸術劇場コンサートホール

阿部加奈子(指揮)
コンスタンチン・シェルバコフ(ピアノ)
名古屋フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27

アンコール
ラフマニノフ:幻想的小品集 作品3-1「悲歌(エレジー)」
チャイコフスキー:バレエ『眠りの森の美女』作品66より「ワルツ」

ヨーロッパ在住の日本人指揮者、阿部加奈子さんは東京藝術大学音楽学部作曲科を経て、パリ国立高等音楽院を修了しています。
また、コンスタンチン・シェルバコフ(Konstantin Alexandrovich Scherbakov)と言いまして、1983年の第1回ラフマニノフ国際コンクールで優勝した実績があります。
特に、第20回オソロ室内楽音楽祭(Chamber Music Festival of Asolo)でラフマニノフの全曲演奏を行い、スヴャトスラフ・リヒテルに称讃された優れものです。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18

阿部加奈子さんの指揮で、コンスタンチン・シェルバコフさんが弾くピアノは、ラフマニノフのややビターなテイストで、耳がぐいぐい惹き付けられます。

第1楽章は自由なソナタ形式でロシア正教の鐘をイメージした音をピアノが鳴らした後に、ロシア的な重厚なオーケストラが第1主題を演奏します。
この冒頭の音楽は「のだめカンタービレ」で取り上げられたことから、若い世代にも馴染みのある音楽ですよね。

第2楽章は静かな弦楽器がクレッシェンドを迎え、ピアノがアルペジオで入ってきます。
このピアノの上に柔らかなフルートのメロディーが乗り、それをクラリネットが受け継ぎます。
優美な音楽がピアノにも移り、しばらく演奏されると音楽は短調となりテンポを増します。

第3楽章は短いオーケストラによる序奏を経て、ピアノが勢いよく登場しスケルツォ風の第1主題を奏でます。
続いて抒情的な第2主題がオーボエとヴィオラによって登場し、ピアノに引き継がれます。
この対照的な2つの主題が交わりながら音楽は進み、壮大な盛り上がりの中で作品は幕を閉じます。
つまり、世界的スペシャリストなんですね。
アンコールでラフマニノフ作曲の幻想的小品集 作品3-1「悲歌(エレジー)」が演奏されました。

ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27

ピアノ協奏曲第2番で成功を収めたラフマニノフは交響曲第2番を作曲します。
実は、ラフマニノフの家族でドレスデンに移りますが、夏の間だけ妻の実家の別荘のあるイワノフカ村で過ごします。
そのイワノフカ村ですがまさに田舎なのです。
モスクワから550kmも東方にあり、モンゴル共和国より東で、満州に近くで、モスクワより日本に近いという、おいそれとは行けない場所にあります。
そのイワノフカ村にあるラフマニノフ博物館を訪れる旅行もあるようです。

4楽章形式の交響曲です。
緩ー急ー緩ー急という、バロック時代の教会ソナタを思わせる構成です。
ブルックナーも良く使っていた構成ですね。
ラフマニノフの交響曲第2番は色々な要素が詰まった交響曲なので、形式などはあまり意識しなくても良い気がします。

アンコールで、チャイコフスキー:バレエ『眠りの森の美女』作品66より「ワルツ」が演奏されました。