コンサート感想 2024

2024年01月25日(木) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(名古屋市民会館 大ホール)

第89回市民会館名曲シリーズ
〈マイ・フェイヴァリッツⅣ/シェレンベルガーのグレイト〉

名古屋フィルハーモニー交響楽団
ハンスイェルク・シェレンベルガー(指揮、オーボエ)
マルギット=アナ・シュース(ハープ)

プログラム
1.モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K.299[オーボエとハープ版]
2.シューベルト:交響曲第8番ハ長調 D 944『グレイト』

【ソリストアンコール】
R.シューマン:リーダークライスより第5曲「月夜」
オーボエ:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ハープ:マルギット=アナ・シュース

聴きどころ
近年では指揮者としても大活躍のシェレンベルガー氏と名フィルによるシューベルトの傑作、グレイト。
歌曲王として名を馳せたシューベルトでしたが、この大曲により人々の認識を覆しました。
オーボエとハープに編曲されたモーツァルトの協奏曲も他では聴けない必聴物です。
是非会場でお楽しみください!

ハンスイェルク・シェレンベルガーとは?
ドイツのオーボエ奏者であり、指揮者です。
1980年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席オーボエ奏者に就任し、2000/2001年のシーズン終了までこのポストを務めます。
1998年10月23日にクラウディオ・アバド指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で
このオーボエ奏者も聴いています。
素晴らしいパフォーマンスでした。
今回、名古屋フィルハーモニー交響楽団で指揮までする?と言うのでむちゃくちゃ嬉しく思います。

マルギット=アナ・シュースとは?
ミュンヘン出身のハープの女王でシェレンベルガーの妻である方がマルギット=アナ・シュースです。

モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K.299[オーボエとハープ版]

ハンスイェルク・シェレンベルガーさんの指揮&オーボエ、
マルギット=アナ・シュースさんのハープで、
オーボエとハープ版のモーツァルト「フルートとハープのための協奏曲」を聴きました。
ハッピーな気分になれること間違いなしの琴瑟相和す演奏です。
C管オーボエのコンプリートで華やかな調べには愉快な曲かと思いました。
また、素晴らしいハープも紅一点面白かったようです。
世界で活躍するハープの第一人者ですから高みに導くことありかなと思いました。

【ソリストアンコール】で、
R.シューマン:リーダークライスより第5曲「月夜」を演奏しました。
第一音目から月の輝きを感じるようなインパクトのある曲ですから、
すぐに月夜の世界へと吸い込まれていきますよね。

シューベルト:交響曲第8番ハ長調 D 944『グレイト』

本当に天国的な長さです。
今回は、まさに天国的な長さを地で行った演奏でした。
ハンスイェルク・シェレンベルガーさんの指揮で、シューベルトの交響曲第8番『グレイト』を聴いたのですが、
普通は、50分ぐらいの所、繰り返しリピートする事で60分越えの曲となりました。
ある意味の中で管楽器には指示が半端でないようで指揮者の指示で統一していた気がしました。
つまり、管楽器の持つ感性のような意味を最大限利用したイメージがあるのかなと理解しました。
そして、第1,2,3,4楽章のCODE理論の意味。
日本人のないドイツ人特有の指揮アクションにただただ作り方のこだわりが芽吹き、そして、納得感あるなと思いました。










2024年03月24日  日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(名古屋市民会館 大ホール)

第90回市民会館名曲シリーズ〈マイ・フェイヴァリッツⅤ/川瀬賢太郎のローマ三部作〉
市民会館名曲シリーズ

出演

川瀬賢太郎(指揮/名フィル音楽監督)

名古屋フィルハーモニー交響楽団

プログラム
1.レスピーギ:交響詩『ローマの噴水』
2.レスピーギ:交響詩『ローマの松』
3.レスピーギ:交響詩『ローマの祭』

本日、〈第90回市民会館名曲シリーズ〉の開演前15:30から、1階席ホワイエにて、ロビー・コンサートを開催!

出演は、VIOLASSIMO! によるヴィオラ・アンサンブルです。

▼レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第1組曲より
 第1,4楽章

▼ヴェルディ:歌劇『椿姫』より
 序曲

ただいま、VIOLASSIMO! によるロビー・コンサートの真っ最中! 名フィル・ヴィオラ・セクション全9名が、レスピーギ&ヴェルディのイタリア🇮🇹プログラムを演奏いたします!

アンコール
マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(名古屋市民会館 大ホール)では
名古屋フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターが退任(お辞め)されると言うのでお邪魔したのです。

さて、開演前15:30から、1階席ホワイエにて、ロビー・コンサートを開催しておりまして、VIOLASSIMO! によるヴィオラ・アンサンブルを開催しておりました。

1.レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第1組曲より第1,4楽章
2.ヴェルディ:歌劇『椿姫』より序曲

プログラムは、レスピーギ:交響詩『ローマの噴水』、レスピーギ:交響詩『ローマの松』、レスピーギ:交響詩『ローマの祭』です。

レスピーギ:交響詩『ローマの噴水』
オルガンあるし、チューブラベル(ニ音のもの)もあるし、第1部 夜明けのジュリアの谷の噴水、第2部 朝のトリトンの噴水、第3部 真昼のトレヴィの泉、第4部 黄昏のメディチ荘の噴水4つの部分は連続して演奏されるので、リムスキー=コルサコフの管弦楽法の影響が見られるのが特長です。
古典的な交響曲にみられる4楽章構成をとっており、それぞれは、「夜明け」、「朝」、「真昼」、「黄昏」の時間帯と、ローマの名所4箇所の噴水が、当てはめられているそうです。

レスピーギ:交響詩『ローマの松』
第1部 ボルゲーゼ荘の松、第2部 カタコンバ付近の松、第3部 ジャニコロの松、第4部 アッピア街道の松で、オルガンとトランペット&トロンボーンとのアッピア街道の霧深い夜あけが1番感動する。
古代ローマの進軍道路として使われたアッピア街道の石畳の道は、今でも残るそうでピアニッシモから「軍隊の行進」に伴い徐々に音強を増し、フォルティッシモに至るのが素晴らし演奏です。

レスピーギ:交響詩『ローマの祭』
第1部 チルチェンセス、第2部 五十年祭、第3部 十月祭、第4部 主顕祭、パーカッション (最低9人)全快で、マンドリンもあり、単一楽章で4つの部分が切れ目なく演奏される、
各部分は、古代ローマ時代、ロマネスク時代、ルネサンス時代、20世紀の時代にローマで行われた祭りを描いたものであるので、古代ローマ帝国で競技や戦いの場で兵士を鼓舞するために吹き鳴らされていた金管楽器が素晴らし演奏です。

アンコールで、マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲をやりましたが、日比さん(コンサートマスター)から記念撮影をしておりました。観客席の写真撮影に収めたので良かったです。










2024年04月03日(水) 愛知県芸術センターコンサートホール

トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン(管弦楽)
下野竜也(指揮)
名古屋フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

エルヴィン・クランバウアー(フルート)
ペーテル・ソモダリ(チェロ)
エルマー・ランダラー(ヴィオラ)

【曲目】
モーツァルト:フルート協奏曲 第1番 ト長調 K.313
 ◇トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン単独演奏
R.シュトラウス:交響詩「死と変容」Op.24
R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」Op.35 (チェロ独奏/ペーテル・ソモダリ、ヴィオラ独奏/エルマー・ランダラー)

◇トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン&名古屋フィルハーモニー交響楽団 合同演奏 (指揮/下野竜也)

モーツァルト:フルート協奏曲 第1番 ト長調 K.313

トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンの単独演奏です。
エルヴィン・クランバウアー(フルート)のハーモニーは、協奏風ソナタ形式から始まるフルートが表情豊かです。
躍動感があり、大変楽しめる演奏と思います。
明るく伸びやかで、とても親しみやすい作品でした。

R.シュトラウス:交響詩「死と変容」Op.24

◇トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン&名古屋フィルハーモニー交響楽団 合同演奏 (指揮/下野竜也)

実は、ドイツ語のVerklärungを「変容」と訳してあるのだけど、
これはもともと、十字架にかけられたキリストの相貌が死に臨んで激変し、
安らかな表情に変わったことを意味する言葉です。
「光明で満たすこと」、「浄化」といった訳にもなります。
この若書きの〈死と変容〉では、凡てが朽ち果てるという切実な実感の代わりに、
幻想的なロマンとしての“死”が描かれているのです。
つまり、“死”をテーマにすることで“生”とは何かを問いかける、
というのは、ロマン派の流行みたいなもので、
直接的には、交響詩の創始者リストの交響詩〈レ・プレリュード〉
(“生”は“死”の前奏曲に過ぎないというのが標題の意味)を継承した内容になっている訳で
流石かと思いました。

R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」Op.35
(チェロ独奏/ペーテル・ソモダリ、ヴィオラ独奏/エルマー・ランダラー)

◇トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン&名古屋フィルハーモニー交響楽団 合同演奏 (指揮/下野竜也)

交響詩『ドン・キホーテ』の独奏チェロ・パートはチェロのもつ雄弁な性格をうまく表現しており、
チェリストにとって重要なレパートリーです。
しかし、あくまで交響詩であるがゆえ、チェロ協奏曲のような演奏効果をもたらさないようです。
その一方で、卓抜した管弦楽法により多彩に鳴り響くオーケストラは、聴きものであります。
指揮者の解釈によっては独奏チェロがあまり目立たない演奏を好む見たいです。
それに、ヴィオラ独奏はチェロ独奏よりもさらに目立たないけど、
低弦でのユーモラスな動きや中音から高音域にかけての伸びやかな音色など
ヴィオラの持つ個性をうまく表現しているので素晴らし演奏です。
まさに、大管弦楽のための騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲でしょう。










2024年04月19日(金) 愛知県芸術センターコンサートホール

名古屋フィルハーモニー交響楽団 第522回定期演奏会

〈チェコ人の喜怒哀楽/スメタナ生誕200年記念〉

第522回定期演奏会
〈チェコ人の喜怒哀楽/スメタナ生誕200年記念〉

スメタナ:連作交響詩『わが祖国』
第1曲:ヴィシェフラド「高い城」
第2曲:ヴルタヴァ「モルダウ」
第3曲:シャールカ
第4曲:ボヘミアの森と草原から
第5曲:ターボル
第6曲:ブラニーク

アンコール:
マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」~間奏曲
スメタナ:連作交響詩『わが祖国』 第6曲:ブラニーク コーダ最終部

小林研一郎(指揮/名フィル桂冠指揮者)

名古屋フィルハーモニー交響楽団

聴きどころ

2024/25シーズン最初の定期演奏会に登場するのは名フィル桂冠指揮者=小林研一郎!
「コバケン・スペシャル」でおなじみですが、定演は2010年以来。
しかも取り上げるのがスメタナの「わが祖国」!コバケンにとって代名詞のようなこの曲。
シーズンしょっぱなから壮絶な喜怒哀楽を体験させてくれそうです。

チェコ人の喜怒哀楽であるスメタナ。
今回、生誕200年記念の記念コンサートであれば聴かない訳にはいかないです。
名フィル桂冠指揮者=小林研一郎もチェコ・フィルハーモニー管弦楽団と
1997年盤のCDがあるので期待が持てます。
確かですが、小林の『わが祖国』といえば、
2002年に日本人として初めて「プラハの春」のオープニング・コンサートにおいて
同曲をチェコ・フィルハーモニー管弦楽団で指揮するという偉業を行い、
なおかつ、終演後にスタンディング・オベーションが巻き起こったというエピソードが有名です

スメタナ作曲の連作交響詩『わが祖国』全曲ですが、
1997年5月22日(木)、イルジー・コウト指揮、NHK交響楽団。
2006年5月13日(土)、小林研一郎指揮、名古屋フィルハーモニー交響楽団を聴いた事ありますが、
いまいちな感触しか残っていません。
今回はどうでしょうか。

スメタナ:連作交響詩『わが祖国』

第1曲:ヴィシェフラド「高い城」

曲はハープの気高く美しいデュエットから始まります。
このハープは吟遊詩人の奏でるハープをイメージしているのだけど、
吟遊詩人が唄う内容はかって存在したヴィシェフラド城で繰り広げられた栄華を誇った古城というイメージを
ロマンティックな情景で誘うのです。
それが素晴らしく良かったです。

第2曲:ヴルタヴァ「モルダウ」

フルートのデュエットで始まるこの曲は、ヴルタヴァ川の源流をイメージしております。
微かな水の滴りがやがて大きな川の流れになる様を見事に描いています。
ボヘミアの豊かな自然の中を流れるヴルタヴァ川。
その中に農民の踊りがあり、夜に月明かりに照らされる美しいヴルタヴァ川の様子もイメージされると
急流(雷雨)を迎えるが、それを超えて川はプラハの街に達すると言う内容です。
ある意味可視化のような演奏をしており素晴らしいです。

第3曲:シャールカ

シャールカとはチェコの伝説に伝わる「乙女戦争」の事です。
恋人に裏切られたシャールカはすべての男たちへの復讐を決意します。
自らを木に縛り、通りかかった騎士達に助けを求めます。
騎士達はシャールカの縄をほどくと、助けてくれたお礼にとシャールカは酒を振る舞います。
それはシャールカの罠だったのです。
酔いつぶれた男達を皆殺しにし、シャールカは復讐を果たすのだったのです。
これを演奏する為にはそういう激しい物語を意識してか、音楽も劇的に盛り上がるものとなっています。
宴会の後、酔いつぶれる男達。
ファゴットの音はいびきを模したものであろうか。
その後に吹き荒れる、嵐。
やはり、チェコの伝説に伝わる烈女が凄いのででしょう

第4曲:ボヘミアの森と草原から

ボヘミアの大自然を見た時の心の動きを表現した曲で、
《モルダウ》のような作曲者自身による説明はないけど、ポルカといった農民の踊りなど、
イメージできるものはあるだろうと思う。
対位法も駆使されているから、最後は勇壮なイメージで曲は終わるのがいい意味憎いです。

第5曲:ターボル

この曲と続く第6曲《ブラニーク》で一つの物語をなしており、
スメタナもこの二曲は一緒に演奏されることを望んだ経緯があります。
つまり、この二曲は密接にチェコの歴史と結びついているのです。
中世、プラハ大学の総長もつとめた知識人ヤン・フスはカトリック教会を批判しました。
それにより宗教改革の狼煙を上げます。
しかし、フスは異端と見做され火刑にされ命を落とします。
これが1415年のことです。
すると、フスを信奉するボヘミアの人々は団結し、ボヘミアを支配せんとする諸外国に対し戦いを起こしました。
それが、フス戦争です。
しかしながらフス派の人々は最後には敗れ去ってしまうのです。
賛美歌「汝ら、神の戦士らよ」を曲のテーマに基づきます。
音楽も重苦しい雰囲気のまま、終結に向かいます。

第6曲:ブラニーク

ブラニークはボヘミア中部にある山のことです。
ボヘミアの危機の時にはここに眠るフス派の戦士達が目覚めボヘミアの危機を救うという伝説があります。
それは明るく希望に満ちています。
そして戦い、勝利への主題が流れ、高らかに全曲は締めくくられます。

結果、ブラボーの連呼が凄かったです。

さて、42年に渡り尽力された名古屋フィルハーモニー交響楽団のヴァイオリンの石渡さんが退任を向います。
そこで、アンコールで、マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」~間奏曲を演奏されました。
第二の人生に向けて歩いて行こうと思います。
ありがとうございましたとのコメントがありました。

最後に、第6曲:ブラニークのコーダ最終部を演奏しブラボー喝采で終わりました。










2024年05月25日(日) 日本特殊陶業市民会館フォレストホール(市民会館名曲シリーズ・特別演奏会)

第91回市民会館名曲シリーズ〈和欧混交Ⅰ/尾高尚忠とブルックナー-ブルックナー生誕200年記念〉〉

市民会館名曲シリーズ
2024.5.25 (土) 16:00

名古屋フィルハーモニー交響楽団

マティアス・バーメルト(指揮)
ワルター・アウアー(フルート)

プログラム

尾高尚忠:フルート協奏曲 作品30b
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調[ノヴァーク版]

アンコール
ドビュッシー:シランクス

ロビーコンサート

15:30~より、1階ホワイエにてロビーコンサートを行います。

出演:
小泉悠、瀬木理央(ヴァイオリン)
小泉理子、石橋直子(ヴィオラ)
アイリス・レゲヴ(チェロ)

曲目:
ブルックナー:弦楽五重奏曲ヘ長調より第1楽章

ロビー・コンサートで、ブルックナーの弦楽五重奏曲より第1楽章をお届けしましたので聴いてましたが、これはブルックナー55歳の作品で、交響曲第6番の後に書かれた作品なんですが、室内楽作品でありながらも、ブルックナー・リズム(2拍+3連符という音型のリズムが特徴的です。)で、ブルックナー休止(オーケストラが休止し、曲想を転換させる手法です。)で、ブルックナー・終止(金管楽器と打楽器が大音量で鳴り響くクライマックス。)で、そして、コラールのような室内交響曲を聴いているような、そんな作品でした。
まあ、ブルックナースケールで問えば、弦楽五重奏曲は「擬装」交響曲と言われていますから構築音楽って感じでしょうか。

尾高尚忠:フルート協奏曲 作品30b

尾高尚忠作曲、「フルート協奏曲 Op.30b」は、1951年に完成され、今では世界中で演奏される日本を代表するフルート協奏曲です。
大編成版のオーケストラ用楽譜は、現在も貸譜となっているそうです。
フルート協奏曲の曲調としては、後期ロマン派的な要素を持ちながら、日本らしさを全面に押し出して、主張するのではなく、西洋的な枠組みに収めながら、東洋的な枠組みに収めながら、しかし、言いようのない要素をさらりと感じさせるのが、尾高のフルート協奏曲に宿された精神ではないだろうかと思います。

アンコールで、ドビュッシー:シランクスを演奏しました。

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調[ノヴァーク版]

一般的なブルックナーサウンドをも唸らせる高水準の演奏をするらしく、指揮者であるマティアス・バーメルトはお年寄りなのにパワーあるようで、この日の演奏は、驚くほど安定していて音の濁りがありませんし、極めて明晰です。
淡々としたもので、オーケストラへの指示も的確です。
ゆったりとなだらかに歌う「女性的」な弦楽を中心で素晴らしの演奏なのです。

第1楽章
アダージョ楽章的な "歌う音楽" としての性格を採り入れようとするのは、ロマン派の交響曲の大きな潮流のひとつです。
弦の刻みによる神秘的な微光のなかから浮かび上がってくる第1主題は、フレーズの長さに驚かされるそうです。
リズム・パターンを反復することなく、ひたすら一途に歌い続ける構造は、まるでアリアのような響きかと思います。

第2楽章
コーダを書き上げて、これをワーグナーの為の「葬送の音楽」と奏でるとは憎い演出です。
ワーグナー・チューバを中心とした嘆くような主題は、ブルックナーのアダージョ楽章にふさわしい。
その中で、トランペットとホルン、ワーグナーテューバの掛け合い、シンバルとトライアングルのポイントは、ゾクゾクした感触がありました。

第3楽章、
スケルツォも大変意識して演奏しておりまして力強い楽想で際だっていました。
スケルツォらしい自由で破天荒な転調が次から次へと続いていくけど、いかにもブルックナーらしい和声の発明に満ちています。

第4楽章
深い繋がりが持たされているワーグナー・テユーバの使われ方には魅力を感じます。
天上に昇った彼の霊に譬えられようフィナーレの骨子に神の世界に近づいて行くというのが基本的な構図らしく、宗教的な何らかの問答を見ることだろうとは思います。
ホルンに始まるが、既に天上界に入ったことを示すような望み。
解りますでしょうか。
交響曲第7番は、ブルックナーのワーグナーの思いを込めたオーケストレーションだからブルックナーサウンドのようなもの、つまり、輝きそのものなのかも知れません。











2024年07月05日(金) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(名古屋市民会館 大ホール)

2024.7.5 (金) 18:45

日本特殊陶業市民会館フォレストホール(市民会館名曲シリーズ・特別演奏会)

第92回市民会館名曲シリーズ

〈和欧混交Ⅱ/望月京とベートーヴェン〉

名古屋フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

ニル・ヴェンディッティ(指揮)
サー・スティーヴン・ハフ(ピアノ)
小川響子(名フィル コンサートマスター)

プログラム
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30*
望月京:ニライ-ベートーヴェンの交響曲第2番と第6番の間奏曲
ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 作品36

【ロビー・コンサートのご案内】
本日、〈第92回市民会館名曲シリーズ〉の開演前18:15~、1階席ホワイエで、ロビー・コンサートを開催!
出演は、小泉理子Va+北島明翔Cbの弦楽デュオです。

▼シュペルガー:ヴィオラとコントラバスのための二重奏曲より第2, 3楽章

★望月京によるプレトーク決定!(18:30~)

【アンコール情報】
本日のソリスト、ピアノのサー・スティーヴン・ハフによるアンコールは、
▼アントン・ルビンシテイン:2つのメロディー 作品3より第1番「ヘ調のメロディー」

日本特殊陶業市民会館フォレストホールで市民会館名曲シリーズ・特別演奏会、
第92回市民会館名曲シリーズに〈和欧混交Ⅱ/望月京とベートーヴェン〉行ってきました。

まずは、ロビー・コンサートでシュペルガー:
ヴィオラとコントラバスのための二重奏曲より第2, 3楽章を聴きました。
小泉理子Va+北島明翔Cbの弦楽デュオです。
私は、知らなかったけど、シュペルガーとは、オーストリアのフェルツベルク(現チェコ領)に生まれ、
ウィーンで教育を受けた宮廷楽団のコントラバス奏者です。
また、コントラバスのお供にヴィオラも愛用しておりまして、
モーツァルトのようにロマン派への道程が見えてきそうなチャーミングな曲でした。

★望月京によるプレトーク決定!(18:30~)
舞台で望月京さんの自作のプレトークが始まりましたので聴いてました。
世界が注目する作曲家が自ら語る、作曲の経緯や作品の聴きどころ満載でした。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30*

冒頭は指揮者との呼吸がやや合わなかった部分はありました。
しかし、途中からはハフのテンポに指揮者が合わせる形で進んでいき、
なかなかスケールの大きなラフマニノフを聴くことができました。
ハフの演奏は安定感があり、適度なロマンス感を漂わせながら彼の世界観を表現していました。
アンコールで、アントン・ルビンシテインの
2つのメロディー 作品3より第1番「ヘ調のメロディー」が演奏されました。

望月京:ニライ-ベートーヴェンの交響曲第2番と第6番の間奏曲-

マリス・ヤンソンスが2012年にミュンヘンでのベートーヴェンチクルスを開催した折に
6人の作曲家に委嘱した作品の一つで、
プログラムのベートーヴェン交響曲第2番と第6番の間に演奏されたものです。
タイトルの「ニライ」とは、沖縄の言葉で「根の国」、「根の方」といった意味を持つ言葉のようで、
交響曲第2番の終楽章の2度の音程をモチーフに曲が組み立てられているようです。
ただ、現代音楽ですから不協和音の連続ですので、いろいろな打楽器の連打が圧倒的でした。

ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 作品36

最近の傾向というか、ピリオド奏法の延長で、しかも早めのテンポで畳みかけるように音楽が進みます。
特にティンパニも高めのマレットで鋭い打音で演奏されます。
音楽は、生き生きとしていて、片足を上げながら踊るような指揮ぶりで音楽を進めましたので
面白い女性指揮者です。
ヴェンディッティさんを見る限り、かつ女性で、かつ小柄というせいもあるのでしょうが、
身振り手振りの表情は大きく見ていると楽しい指揮ぶりです。
いろんな、ベートーヴェン:交響曲第2番を見ましたが、あれだけのアップテンポは、見たことがありませんでした。
アンコールは、用意してなかったのか、コンマスと相談して終楽章のコーダの部分のみを再演しました。










2024年07月07日(日) 愛知県芸術センターコンサートホール

名古屋ブルックナー管弦楽団 第29回演奏会

指揮:新田ユリ

ブルックナー交響曲第0番/シベリウス交響曲第2番

プログラム

ブルックナー:交響曲第0番二短調
(休憩)
シベリウス:交響曲第2番ニ長調

出演者

指揮:新田ユリ

演奏:名古屋ブルックナー管弦楽団
   (アマチュア東海学生オーケストラ連盟)

当団ですが、ブルックナーの没後100年を記念して、
名古屋大学を中心とした当時の東海学生オーケストラ連盟の参加メンバーをもとに設立し、
1996年に第1回の演奏会を行っておりました。
今回は29回目の演奏会となります。
実は、第1回から名古屋ブルックナー管弦楽団の存在を、東海学生オーケストラ連盟の存在を知っておりました。
今回、ブルックナーの生誕200年に交響曲第0番を演奏すると言う事でお邪魔しようかなと思ったからなんです。

ブルックナー:交響曲第0番二短調

ブルックナーの生誕200年にあたりますので敢えて演奏機会の少ないブルックナーの交響曲第0番を演奏しました。
ブルックナーの交響曲の中でもっともとっつき難い、
いやいや、この曲は、初期作品ながら、
ブルックナーらしい構成を備え、
金管の強奏や木管の印象的なソロ、コラール風の旋律や民俗舞曲風のリズムなど、
ブルックナーの交響曲の特色を多く持っているから凄いんですよ。
ブルックナー休止、ブルックナーサウンドが木霊して充実感がありました。
プロに近いアマチュア集団って感じです。

シベリウス:交響曲第2番ニ長調

指揮者の新田ユリと言えば、
日本シベリウス協会第3代会長であり、
日本・フィンランド新音楽協会代表であり、
アイノラ交響楽団正指揮者でもあります。
黙って聞くしかないでしょう。

フィンランドの作曲家であるシベリウスは、
91年という長い生涯の中で多くの作品を作曲しましたが、
交響曲第2番は最も多く演奏される曲の一つで、シベリウスの代表作です。
弦楽器による波がざわめくような動きの上で、
木管楽器が奏でる軽妙な第1主題に、ホルンが応答するという印象的な音楽で曲は開始されます。
田舎風なファゴット、幻想風なヴァイオリンによる主題を経て、
木管楽器が特徴的な音型の第2主題を演奏します。
弦楽器のざわめきの中で木管楽器が悲しげに呼応しあい、
ティンパニの不気味なつぶやきを経て、様々な主題が重なりながら劇的に盛り上がります。
その頂点で世界が開けたように、トロンボーン・チューバが先陣を切り、
金管楽器が高らかに鳴り響かせる音楽は感動的です。
壮麗なニ長調の響きは痺れました。

流石「ブルックナー」と真骨頂の「シベリウス」です。
びっくりするレベルです。
特に、冠するだけあって、練度の高いブルックナーの交響曲第0番には、
名古屋ブルックナー管弦楽団の凄みを感じました。










2024年07月26日 愛知県芸術場コンサートホール

OKAYA チャリティーコンサート2024 ~感謝の夕べ~

【出演】

松井慶太(指揮)
沢田蒼梧(ピアノ)
片本淳之介(ヴァイオリン)
名古屋フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

【曲目】

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 ト長調

ソリストアンコール
J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番ハ長調 BWV1005より第3楽章「ラルゴ」
ショパン:ノクターン第7番嬰ハ短調op.27-1

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」

松井慶太(指揮)ですが、人気ドラマ『のだめカンタービレ』出演者の指揮指導にあたり、
のだめオーケストラ演奏会を指揮したことでも知られています。
今回、初の名古屋フィルハーモニー交響楽団演奏会です、
さて、Coliolanとは、ハインリッヒ・ヨーゼフ・コリン(Corinne、女性名)による劇作家「コリオラン」に由来します。
演奏では、悲劇の暗示があり、中間部では牧歌的曲想も含み、
短い弦のピッチカートで終了する悲劇的シーンもあり、痺れました。

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調

今回演奏した片本淳之介(ヴァイオリン)ですが、まだ小学校5年生なのですが、
全日本小学生コンクールにおいて2位と言う将来期待できるヴァイオニストなのです。
しかも、名古屋出身なんです。これ自体は嬉しいでしょう。
ブルッフならではの自由な発想と、作曲家一流の旋律美、
幻想的な色彩がバランスよく組み合わさった傑作かと思います。
片本淳之介を聴くと、少しまだまだ豊かに演奏仕切れていない気もしますので、
これからどう演奏しきれるかが課題かなと思います。

ソリストアンコールで、J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番ハ長調 BWV1005より第3楽章「ラルゴ」が演奏されました。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 ト長調

去年に引き続き、沢田蒼梧(ピアノ)は2回目の演奏です。
ショパン国際ピアノコンクールでは、2次予選まで進んだ強者で
名古屋大学医学部から研修医に進んだ異色のピアニストです。
第1楽章は、Allegro moderato。
Pfソロで開始。
その後、オーケストラの序奏があり、同音連打もあります。
カデンツアもありますが・・・
ベートーヴェン自身のカデンツアなのか、自分のように独自なカデンツアなのか・・・
これはこれで良かったですよ。
第2楽章は、Andante conmoto。
オーケストラとPfの対話があり、暗雲立ちこめる曲想に運命を感じました。
第3楽章は、Rondo. Vivace。
一転して明るく躍動的で短いカデンツア付で素晴らしかったです。

ソリストアンコールで、ショパン:ノクターン第7番嬰ハ短調op.27-1が演奏されました。










2024年09月01日 愛知県芸術場コンサートホール

第6回ふれあいFanFunコンサート2024

愛知県芸術劇場コンサートホール
鈴木忠明(指揮)
清野友香莉(ソプラノ)
ふれあいFanFun合唱団2024(合唱)

1.チャイコフスキー:歌劇『エフゲニー・オネーギン』 作品24より「ポロネーズ」
2.ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67『運命』
3.モーツァルト:歌劇『魔笛』 K.620 序曲
4.モーツァルト:歌劇『魔笛』 K.620より夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように」*
5.J.シュトラウスⅡ世:喜歌劇『こうもり』序曲
6.J.シュトラウスⅡ世:ワルツ『春の声』(抜粋)*
7.プッチーニ:歌劇『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」*
8.ドヴォルザーク[廣瀬充編]:我が母の教え給いし歌**
9.ヴェルディ:歌劇『アイーダ』より「凱旋行進曲」**
10.プッチーニ:歌劇『トゥーランドット』第3幕フィナーレ部*/**
アンコール:
ベートーヴェン:交響曲第9番第4楽章フィナーレ
ヨハン・シュトラウス1世が:ラデツキー行進曲

第1部では、
チャイコフスキー:歌劇『エフゲニー・オネーギン』 作品24より「ポロネーズ」
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67『運命』を聴きました。
特に、ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67『運命』では、
ベートーヴェン的には、一般的に出来る演奏でした。
当時、軍隊楽器で使われていたピッコロとトロンボーンを第4楽章に使うことでも有名で、
人々の歓喜とも言えるエネルギーを実現したと言われていますし、
第1楽章~第4楽章まで形を変えてのジャジャジャジャーンですから喜ばれるのは当然です。

第2部では、オペラの祭典を聴きました。
特に、モーツァルト:歌劇『魔笛』 K.620より夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように」は痺れました。
ウィーンへ留学したことあるソプラノ姫ですから夜の女王のアリアを歌うのは当然の選択なのかも知れません。

アンコールは、ベートーヴェン:交響曲第9番第4楽章フィナーレと
ヨハン・シュトラウス1世が:ラデツキー行進曲 が演奏されました。










2024年09月06日 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(名古屋市民会館 大ホール) 

第93回市民会館名曲シリーズ〈和欧混交Ⅲ/細川俊夫とマーラー〉

市民会館名曲シリーズ
2024.9.6 (金) 18:45

日本特殊陶業市民会館フォレストホール(市民会館名曲シリーズ・特別演奏会)

八嶋恵利奈(指揮)
大石将紀(サクソフォン)*
山本友重(コンサートマスター/特別客演コンサートマスター)

プログラム
フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』前奏曲
細川俊夫:サクソフォン協奏曲
マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』

本日のソリスト・アンコール
細川俊夫編曲:黒田節

ロビー・コンサート
マルティヌー:二重奏曲第1番『3つのマドリガーレ』H.313より第1, 3楽章
山洞柚里(ヴァイオリン)
叶澤尚子(ヴィオラ)

まずは、ロビー・コンサートを聴きました。
マルティヌー:二重奏曲第1番『3つのマドリガーレ』H.313より第1, 3楽章です。
マルディヌーは、チェコ出身の作曲家。
母国でスークに、フランスでルーセルらに学んだという経歴が、そのまま音楽の特質を表している新古典主義の作曲家です。
そのマルティヌーを聴いたのですが、現代音楽で言えば、イザイ(ベルギー)の作品に近いかなっと思います。
スークよりは斬新でしょう。

八嶋恵利奈(指揮)とはドイツ生まれです。
カイザースラウテルン歌劇場管弦楽団からシカゴ交響楽団の音楽監督リッカルド・ムーティのアシスタントして。
また、バイエルン放送交響楽団のアシスタントとして。
また、フィラデルフィア管弦楽団のアシスタントとしてコンダクターしております。
今回日本初の指揮者で登場しますから期待大です。

フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』前奏曲
フンパーディンクの曲のなかで、歌劇「ヘンゼルとグレーテル」は、初演されてから142年間、
世界中で愛されて、演奏され続けていますから大好きなのでしょう。
歌劇「ヘンゼルとグレーテル」はグリム兄弟によるおとぎ話をオペラ化したものですから、
ドイツ民謡風のわかりやすい旋律とワーグナー風のライトモティーフの使用を見事に両立させ、
グリム兄弟による原作よりも、暖かく優しいものとなっているので演奏的には良かったです。

細川俊夫:サクソフォン協奏曲
細川俊夫のサクソフォン協奏曲が日本初演されるので聴きました。
聴くとわかるのですが、アルト、テナー、バリトンのサクソフォンを超絶技巧の圧巻のソロでホールを包みました。

本日のソリスト・アンコールで、細川俊夫編曲:黒田節が演奏されましたが、サクソフォン=黒田節は皆聴き入るようにジャズ化され、
酔いしれていましたし、斬新で吹いていました。

マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』
小さい体を目一杯使ってダイナミックでありながらきびきびとした所作でオーケストラに指示を出していきます。
特に、ボリュームで旋律を吹き始めたりして、聴かせどころを強調している様も見て取れましたから、さすが、オペラ劇場のアシスタントと思います。
最後のホルンのベルトーンはお得意様で鳴らしていました。
結果、オーケストラ指揮者としてはリッカルド・ムーティに似ているし、伸びしろはあると思いました。










2024年10月20日 愛知県芸術場コンサートホール

名古屋シュピールシンフォニカー 第15回演奏会

日にち:2024年10月20日(日)
時 間:1:15pm開演(12:45開場)
場 所:愛知県芸術劇場コンサートホール
管弦楽:名古屋シュピールシンフォニカー
指 揮:髙谷 光信

曲 目:
アーノルド:管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」
ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」第1組曲・第2組曲
エルガー:交響曲第1番

アンコール
エルガー:エニグマ変奏曲作品36より第9変奏曲(Nimrod)Adagio

1.アーノルド:管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」

アーノルドが音楽を担当した映画「第六の幸福をもたらす宿」は、
イギリスのアラン・パージェス原作の小説「小柄な婦人」にもとづいて、
1958年、アメリカの20世紀フォックスによって、マーク・ロブソンを監督に起用して、イギリスで制作されました。
中国では5つの幸せという教えがあって、それらは富、長寿、健康、徳と、老齢になって
やすらかに死ぬこと(孔子編「書経」による)なので、第六の幸せは自分で探すもの、
つまり、キリスト教を広めることが「第六番目の幸福」という意味で、宿の名前としました。

第1楽章:ロンドン・プレリュード
和音が華々しく炸裂して始まる冒頭部にのせてグラディスがスーツケース片手にロンドンのビクトリア駅に降り立ちます。
それは、蒸気機関車の出発の情景描写が彼女の数奇な運命の始まりを暗示しているかの様です。
つまり、冒頭から提示される三連符のファンファーレ風の主題は彼女の「決意」を表しているようです。
絶えず展開を伴う行進曲風な第2主題は「愛のテーマ」であり、この2つの主題が曲全体の共通の主題として重要な役割を果たしていきます。

第2楽章:ロマンティック・インタリュード
チェロによって憧憬の念をたたえた旋律が奏でられた後、中間部では上記二つの主題が静かに再現され、
グラディスと、ヨーロッパ人と中国人のハーフの中国軍将校であるリン・ナンの間で愛情が深まっていく様子が描写されていきます。

第3楽章:ハッピー・エンディング
冒頭からの「決意」のテーマがここではグラディスの激しい不安と困難な山越えを描写しています。
中間部では子供たちが歌いながら行進する英国民謡「This Old Man」が繰り返される度に力を満ちて広がっていきます。
グラディスと子供たちを讃える人々の歓声の中を無事に目的地に到着するシーンを描写しています。

2.ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」第1組曲・第2組曲

19世紀スペインの作家、アラルコンの短編小説を原作とするバレエ《三角帽子》は、
マヌエル・デ・ファリャ(1876~1946)の舞台音楽のなかでもひときわ高い評価を得た作品であろうと思います。

(1)序奏-昼下がり
ティンパニに導かれて、トランペットとホルンがファンファーレ風な音型を演奏する「序奏」に続き、もの憂い雰囲気で第1部の幕が上がる。

(2)粉屋の女房の踊り
物語の主要登場人物でもある粉屋の女房の、情熱的な踊りが見物。
アンダルシアの代表的な民俗舞踊、ファンダンゴのスタイルが使われています。

(3)隣人たちの踊り
第2部冒頭の音楽で、聖ヨハネ祭を祝う村人たちの踊り。
これもアンダルシアの民俗舞踊のひとつである、セギディーリャスのスタイルで書かれています。

(4)粉屋の踊り
勇壮なホルンの信号、イングリッシュ・ホルンの“こぶし”を思わせる音型に続き、即興性にあふれた男性的なファルーカが踊られます。

(5)終幕の踊り
物語を締めくくる第2部最後の踊りで、大団円に向かってさまざまな展開がくり広げられます。

和音がクッキリしないのは、民俗舞曲的な楽曲を豊かに表現したくないせいなのか、
効率的な方式を考えしにくいように簡素化したせいなのかは分かりませんが、
パントマイム《代官と粉屋の女房》の付随音楽である「三角帽子」も複数の配列でパート(吹奏楽・弦レベル)のポイントの良しあしが理解したい所だけど、
弦ボーイング、吹く意味の付け替えなど確かにどう接してゆけばいいのか分かりにくいのかもあるかも知れません。
いろんな「三角帽子」を研究してもいいかもしれません。
全体的には、豊かさではまとまっておりますので次回に期待でしょう。

3.エルガー:交響曲第1番

交響曲第1番は1907年から1908年にかけて作曲され、初演指揮者のハンス・リヒターに献呈されました。
その初演はマンチェスターでハレ管弦楽団の演奏で行われました。
全体は4楽章から成ります。
第1楽章の冒頭に出て来る旋律が循環主題として用いられて、全曲にわたって何度も繰り返し登場します。
初演は大変な反響を呼び、初演から1年で百回あまりも再演されました。

第1楽章
循環主題がオルガンを思わせる荘厳なトゥッティに盛り上がる。

第2楽章
2拍子系のスケルツォ。
対比は段々と曖昧になる。

第3楽章
前楽章のスケルツォ主題の変容と導かれる祈りのようなコーダ。

第4楽章
神秘的な序奏部の中で重要なのは、ファゴットが導入する主題と、ブラームスの〈悲劇的序曲〉に似た山型のモティーフ。
循環主題がトゥッティで壮麗な凱歌を奏で、主和音によって輝かしく結ばれる。

エルガーの交響曲第1番は序奏部の冒頭で静かに奏されるところまでは定石どおりなのだけど、その後で異変が起こるのです。
トゥッティの ff で、壮麗に繰り返されるのです。
それこそ正に「威風堂々」そのものです。
主題のペアと優位を競いあう歌謡的な主題、戦闘的な性格が増した演奏、ロマン的な感情移入を伴った熱烈な讃歌にまで高まるメリディストみたいでした。。

アンコールで、エルガー:エニグマ変奏曲作品36より第9変奏曲(Nimrod)Adagioが演奏されました。










2024年10月23日(水) 愛知県芸術場コンサートホール

第43回 名古屋銀行チャリティーコンサート

会場 :愛知県芸術劇場コンサートホール
演奏 :名古屋フィルハーモニー交響楽団
指揮者:坂入 健司郎
オーボエ:クリストフ・ハルトマン

モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492 序曲
モーツァルト:オーボエ協奏曲ハ長調 K.314
ブルックナー:交響曲第6番イ長調(ブルックナー生誕200年記念)

アンコール
ブリテン:オヴィディウスによる6つの変容 作品49より 1. パン
モーツァルト:セレナード第13番 ト長調 K.525『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』より第4楽章

1.モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492 序曲

中学校時代に、初めて名古屋フィルハーモニー交響楽団を聴いたのが、モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」です。
その時の指揮者が外山雄三です。
今回は、指揮者が、坂入 健司郎です。
ちょっとだけワクワクで聴きました。
歌劇「フィガロの結婚」序曲は、伯爵の従僕フィガロ、その婚約者である伯爵夫人の侍女スザンナ、伯爵、伯爵夫人をモチーフにテンポよく曲が構成されているのでこれからフィガロの結婚するぞとワクワクものドキドキものの演奏でまあまあいけるレベルでした。

2.モーツァルト:オーボエ協奏曲ハ長調 K.314
オーボエ:クリストフ・ハルトマンが軽やかに、チャーミングに、時々スパイスも利かせて、作品と楽器の魅力をフルに伝えてくれるのが良かったかなと思います。
癒しのモーツアルトの18番ですから、気分ウキウキの、あたたかく、楽しい世界へ引き込まれてしまいました。

アンコールで、ブリテン:オヴィディウスによる6つの変容 作品49より 1. パンが演奏されました。

3.ブルックナー:交響曲第6番イ長調(ブルックナー生誕200年記念)
第1楽章 マエストーソ
この楽章は不思議な曲です。
弦の特徴的なリズムが厳格に刻まれた後に、同じリズムを打楽器が引き継ぎ、その上を派手な金管によって主題が奏されます。

第2楽章 アダージョ
これは後期のブルックナーにも通じる深遠な雰囲気を持つ絶美の曲です。
暗く深い寂寥感を感じさせますが、真に魅力的な楽章ですので、何度聴いても飽きません。

第3楽章 スケルツオ
このスケルツオ楽章は主題がシンプルで楽しいです。
但し、トリオは色々な主題の寄せ集めのようで、何となく散漫な印象を受けます。 

第4楽章 快活に/速すぎず
この楽章の主題として出てくるファンファーレも随分と派手です。
この楽章にもまとまりの無さを感じてしまうのです。
たぶん、恐らく、作曲が遅れてしまった理由は、ブルックナーに良いインスピレーションが沸かずに苦労したからではないかという気がします。

アンコールで、モーツァルト:セレナード第13番 ト長調 K.525『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』より第4楽章が演奏されました。










2024年11月17日(日) 名古屋市電気文化会館ザ・コンサートホール

石原佳代子 ピアノ・リサイタル

【日時】2024年11月17日(日) 13:30開場 14:00開演
【会場】電気文化会館ザ・コンサートホール
【料金】全自由席 3,000円(税込) 
    メルマガ会員のみなさま100名ご招待

【曲目】
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
シューマン:クライスレリアーナ 作品16
リスト/ブゾーニ:パガニーニによる6つの練習曲 第3番「ラ・カンパネラ」
ブラームス:ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 作品5

アンコール
ショパン:ノクターンOp.9-2/Chopin:NocturneOp.9 No.2

音楽学部同窓会事務局
愛知県芸術大学音楽学部同好会

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110

ピアノ・ソナタは、ベートーヴェンのライフワークと呼んでいいジャンルでした。
音楽人生の長い道のりの終盤に書かれたベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番とは、
いったいどんな曲なのでしょうか?

第1楽章は、作品全体の「顔」ともいえる快活なテンポの活かす曲です。
真ん中の第2~第3楽章は、ポップスでいうところのバラード調のしっとりした曲や、
メヌエットなどのダンス音楽をベースにしたリズム豊かな曲が続き、
そして最後の楽章は、しめくくりにふさわしい華やかな曲で終わります。
じっくりと聴いていると、同じメロディが何度も登場しているのがわかるでしょうか。
ベートーヴェンは、晩年、フーガを使った作品を数多く生み出しました。
フーガは、昔からある作曲の技法ですが、それを自分流にアレンジして取り入れることによって、
新しい音楽の世界を作り出そうとしたのです。
さて、ベートーヴェンの「不滅の恋人」研究に恋人候補と
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番との関係に着目し、
嘆きの歌の箇所を「悲しみと悔悟の涙」と表現しましたいわくがあります。
ベートーヴェンを、あるいは彼の作品を、
ときに実物をしのぐほどに強く輝かせますのは凄いかもです。

シューマン:クライスレリアーナ 作品16

シューマンのピアノ曲で「幻想曲」と並ぶ傑作は、やはり「クライスレリアーナ」でしょう。
シューマンはこの作品をショパンに献呈しました。
しかし、作曲過程の段階では恋人のクララに捧げました。
これですが、クララの父親の反対によって、会うことさえ思うようにならなかった未来の妻への情熱と
愛をこめて作曲したと言われていますので傑作かと思います。
今回は石原佳代子というピアニストがこの曲に挑戦していますので聴いていましたが
力をそのまま映す鏡のように、真価は、演奏は、構成的には立派だと思いました。

リスト/ブゾーニ:パガニーニによる6つの練習曲 第3番「ラ・カンパネラ」

ブゾーニ:パガニーニによる6つの練習曲(リスト)第3番「ラ・カンパネラ」といった方がいいです。
わかりますか?
リスト:パガニーニによる6つの練習曲 第3番「ラ・カンパネラ」の編曲版です。
初めて聴く、リスト作曲/ブゾーニ編曲:パガニーニによる6つの練習曲 第3番「ラ・カンパネラ」です。
しかも、フェルッチョ・ブゾーニの編曲で、難易度:28だから難しいタッチポイントです。

ブラームス:ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 作品5

ヨハネス・ブラームスのピアノソナタ第3番は、
最後のピアノ・ソナタでありロベルト・シューマンの許に譜面が送られていますのですが、
テーマとすれば、人は恋をしているときに書くのか、それとも、そこからは離れた場所で書くのか。
それが体現出来るのが今回のソナタのポイントなのです。
しかも、ブラームスは、聴き手にややこしい謎かけを仕掛けてくるのは難解かも知れません。
それは、ピアノ・ソナタ 第3番は、第5楽章と言う事で40分くらいの大曲でのでじっくり聴かないと理解不能かも。

第1楽章

有名なモチーフとなっておりますが、昔、登山家いっちーが作曲したピアノ曲にも似ているフレーズようなテーマもあります。
(登山家いっちーは知らずに作曲したらしいけど?)
第1主題の最初の進行には、これ以後のブラームス作品でしばしばみられる、
ブラームスのモットーの各イニシャルにもとづく音楽が起点となるのは言うまでもありません。

第2楽章~第4楽章

アンダンテ・モルトの結尾部のなだらかな旋律は、
後にワーグナーが「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のハンス・ザックスの歌に流用したと伝えられています。
なお、ブラームスがライン地方の旅行のときに会ったある少女に対する想い出が
こめられているという説もあるので「回顧」という副題もあるようです。

第5楽章

最後の結尾は、カノンを用いての壮大な頂点を築きあげるので聴いていてブラームスの精神が密接化したと思います。
つまり、離れた場所で書く事が、愛の心のノクターン、技術のエチュード、この融合化なのかも知れませんね。

素晴らしかったので、拍手もしたので、アンコールで、ショパン:ノクターンOp.9-2が演奏されました。